外資系戦略コンサル・投資銀行を目指す日本人の相対的弱みとは?

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海外で活躍する日本人から見た、日本人学生と海外大学生を比較した時の相対的な弱みを、北米トップ校で教鞭をとる、現地在住のストロングキャリア講師が解説します。

外資系戦略コンサル・投資銀行を目指す日本人の相対的弱みとは?

こんにちは。私は北米西海岸にある某大学でカリキュラム・キャリアカウンセラーをしております。
投資銀行やコンサルティングファームを目指す学生を担当することもあり、来日の際にはこの外資セミナーの講師としてお話させていただくのを楽しみにしております。
今回はこちらのコラムで、皆さんの主な競争相手である北米学生と日本の学生の就職準備を比較しながら、皆さんへ応援のメッセージを送りたいと思います。

私が勤務する大学では経済・金融専門の学生は学部ではなく「ビジネススクール」に集約されており、高校の平均成績が90%以上の優秀な学生でも入学が厳しいほどの競争率です。
余談ですが、このビジネススクールは当大学にとっても看板スクールであり、予算からスポーツチームまで特別編成で大学から独立しているほど、特に重視されています。
大学のバックアップだけでなく、卒業生も奨学金や新校舎の建設等で在校生を常に応援しています。

私自身も北米の大学院に進む前は日本の大学院に在籍し、現在は日本人留学生の相談に乗ることもあります。
その経験から、優秀な日本人学生がなかなか評価されないことを歯がゆく思っております。
端的に、日本の大学生と北米の大学生の一番の違いはコミュニケーション能力です。と書くと、何度も同じようなことを他でも読んだり聞いたりしたことがあるみなさんは、多少うんざりするかもしれません。
それでもやはり指摘しないわけにはいかないほど、北米の学生とのギャップがある事実は無視できません。ここで、3点のギャップについて挙げてみたいと思います。

語学力

まず、1点目は言うまでもなく、語学力です。
日本で学校教育だけで「使える英語」を身につけるのはかなり困難なことです。
英語がネイティブであるというだけで、ほとんどの北米の学生は外資金融、コンサル業界で日本人に比べて圧倒的に優位に立っているのですが、それだけではありません。

移民、留学生が半数を占める当校では2,3ヶ国語を流暢に話す学生は全く珍しくなく、それに加えてカリキュラムに12単位の語学履修が義務付けられています。
単位取得が厳しい大学では、12単位で生活に全く不自由しない語学力が習得できます。
例えば、当校で日本語を12単位履修した学生は、洗練された敬語も問題なく使いこなせていることに驚かされます。

例えば、某多国籍商社の一番勢いのある中国支社で日本を相手にこのようなビジネスをしたい、などの具体的な目標をあげ、語学を決しておろそかにはしていません。
日本の大学での第二外国語が身についた学生がどれほどいるでしょうか。
語学が目的でなく、自分にとって何のための手段であるかを具体的に言うことができますか。
英語をただ「知っている」くらいではスタートから出遅れることでしょう。

異文化コミュニケーション

第二に、グローバル社会においては多国籍企業内で起こりうるさまざまな文化的摩擦が企業間、社員間で問題になることが多々あります。
異文化コミュニケーションは日本の大学のカリキュラムで組み込まれていることがあっても表面的な理論に終始しがちであり、就職前に実践する機会がありません。

北米の大学生は理論ばかりでなく、様々な文化背景をもつ教授、学生と接触することで、違いを認識した上でのコミュニケーションを自然に学んでいます。
母語の影響による英語のアクセントから文化的な価値観の違いを認識することは、将来のビジネスに直接的にも間接的にも有効です。
また、トラブルがあったときの実践的な対処方も学んでいます。

プレゼン力

第三に、自分を理解してもらえるプレゼン力です。
先にあげた2点について、近年特に増えている中国やインドなど、アジアからの移民、留学生は貪欲です。
英語の多少の間違いやアクセントを恥じる様子もなく、自分の言いたいことを言うだけではなく、相手にわかってもらえるまで言い続けます。
この遠慮のない様子は時に摩擦を生みますが、2番にあげたコミュニケーション力がつくにしたがって徐々にこなれていくものです。

しかし、この言い続ける努力は、遠慮を美徳とする日本人にとっては苦手なものの一つであるようです。
日本人学生の中には、語学のレベルによっては、ほとんどあきらめているような態度も見られます。
このような態度では自分のコミュニケーション力を高めるチャンスを逃すばかりか、クラスや職場にも貢献していないとみなされてしまいます。
北米では、アジア人は「モデル・マイノリティー」とかつて呼ばれたほど、従順、受身、勤勉な態度が評価されていました。

しかし現代のファイナンスやコンサルの生き馬の目を抜く現場では、従順な「モデル」であることはほとんど評価されません。

弱みを克服するためには

以上の理由で、皆さんに二つアドバイスしたいと思います。
まず、時間の許す限り短期でも長期でも、英語圏に限らず一度外国に身を置いてみることをお勧めします。
もちろん、TOEIC などの計れる英語力は持っていると思いますが、日本語とは違う言語、思考回路で暮してみることは外資系会社で異なった文化背景の上司、同僚、クライアントと仕事をするうえで必ずプラスになるはずです。

また、就職活動を経て卒業後に一斉就職、というシステムになっていない北米では、卒業した学生がよく就職前に数ヶ月バックパックなどの旅に出たり、ボランティア活動などで海外に行くことが多いです。
日本の学生が、学生時代の若い一時期を机の上の英語学習と就職活動に費やしてしまうのは残念なことです。

次に、自分の「プレゼン力」をつけるためにも、ファイナンスやコンサル以外の分野で、自分について語れる何かを見つけていただきたいと思います。
それは音楽でも映画でも、アニメやゲーム(実際北米ではこのトピックが人気です)でも何でもかまいません。
自分が好きなことについて話すのは何語でもリラックスできて楽しいものです。
また、他人の「プレゼン」を受け入れるためにも、教養としての広く浅い知識も時には必要です。
小さなことがみなさんのキャリア形成に役に立つかもしれません。

私は今後も大学のキャリアアドバイザー・教育カウンセラーとして、またこのstrong careerの講師として、皆さんが正しいキャリアを選択し、それぞれの分野で社会貢献されることのお手伝いができればと思っています。
随時オンラインでも相談を受け付けておりますが、次回来日時にセミナーでお会いできるのを楽しみにしております。

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