
プライベートエクイティ業界内部の方は首をヘッドバンキング並みに縦に振りながら、同意されることでしょう。
PE業界の中には”誰がどう見ても、ディールメーキングも出来なさそうだしファンドを引っ張ってくることもできなさそうなのに、著名ファームの経営陣の一人として、半永久的にその座に君臨している人々”がいることを。
以下では、”たいして実力はないのだけれども、競争激しいPE業界の中で、いつの間にやら安泰なポジションを築き上げた猛者たち”の5大パターンを解説致します。
1.PE業界の、才能と野心溢れるスター選手の独立に乗っかろう
PEプロフェッショナルとしての才能や実力は凡庸なものの、大成功する一番多いパターンが、有力PEファームから将来の虎(才能と野心溢れるPE業界の若きタレントを、海外PE業界の一部ではタイガーと呼んだりする。決して、阪神ファンのことではない。)が独立した時に、創業チームに入れてもらうパターンです。
あなたはその才能あふれる若き虎が勤務するファンドでアソシエイトとして働き、その虎に忠誠を尽くして高く評価されることを目指します。
長年の忠誠心が実を結び、遂に虎が独立するときに、内々にお声が掛かり、(まだ30代そこそこなのに)肩書がエグゼグティブディレクターに跳ね上がり、ファンドレイズに成功して、めでたくパートナーに上がるパターンです。
PE業界は、まだファンドがない時から苦楽を共にした仲間を厚遇する文化があります。
よって「この人ならファンドレイズも案件獲得もライバルファームに負けないだろう」という上司に出会ったら、そんな社内のスター選手に極力忠誠を誓い、将来虎が独立するときに、一緒に着いて行ける狐を目指しましょう。
2.将来ファンドサイズを大きくできる有力ファンドの成長期に参画しよう
虎の独立に乗り損ねた貴方にも、まだチャンスがあります。
あなたのほうが現時点ではファンドサイズや業界でのランキングという意味で上位PEファンドで働いているのに、まだ歴史も浅くファンドサイズも小さいスモールキャップファンドに転職するのです。
もちろん、単に小さめのファンドに、同じアソシエイトで入るのであれば、単なる都落ちでしょう。
重要なのは、今は200億だけどファンドのパフォーマンスが良く、次に500億、その次にビリオン超えを目指せるファンドを見定めることです。
そしてまだチームサイズが小さくて上が詰まる前に、戦略的に「将来の勝ち馬」に乗るのです。
これは、前述の「勝ち虎」に乗るとまではいきませんが、せめて勝ち馬に乗れたPE業界内の転職成功パターンだともいえるでしょう。
3.資金規模の大きな金融機関の意思決定者に、PE投資チーム設立を持ち掛けよう
これは、嘘のような本当の話。
PEファーム内ではパッとしなかった中堅社員は、転職先でも今一つぱっとしませんでした。
しかしながらPE業界のパーティーなどで出会っていた旧知の知人が、とある大手金融機関の要職に入ったのを契機に、PEチーム創設を提案して、まさかの大成功。
彼は、自分がかつていた古巣から優秀なPE社員を引き抜き、しかも投資に成功した時に入ってくるキャリーを、恐ろしく社員側に有利な条件で契約しました。
いまではその大手金融機関内のPEチーム創業メンバーの実質責任者として、前職の上司を一気に抜き去るPE業界内ポジションを確立しました。
(こういうことがあるので、日本PE協会のイベント運営をボランティアでやっていると、思いもよらないチャンスに繋がることがあるのです)
4.クビにならない日系金融機関のPEチームに長らく居座ろう
これは”PE業界での成功”と聞いて一般に思い浮かべるケースとは異なります。
しかし”成功”の基準を”PE業界内で一目置かれ、末永くPE業界に携われる”という意味でとらえると、ある種の成功と言えるパターンです。
ズバリ、日系大手金融機関のPEファンド投資チームで、LP投資家として数十年居座る人々。
プライベートエクイティ業界は人間関係の蓄積が効くので、長く居ればいるほど、ビジネスに不可欠な人脈がたまっていきます。
確かに、GPサイドですとアップオアアウトが多く(明示的な解雇ではないが、長らくおなじポジションと給与というのは会社側からの明白なサイン)、人材の入れ替わりが激しいものです。
しかし、LPサイドは人の入れ替わりが緩やかというか、比較的長らく居座れるポジションが多いのです。
具体的にどの金融機関なのかを書いてしまえば、業界内部の人は自動的に誰のことを指しているのか分かってしまうことでしょう。しかしながら、このような業界のドンは生保にも銀行にも信託銀行にも、ファンドオブファンズにも等しく存在しています。
ともあれ、PE業界に求めるものが”大好きなPE業界に長年携わる”というものでしたら、大手日系金融機関のファンド投資担当者になれば、意思に反した事例が出るその日まで、時に10年、20年と長期間好きな仕事を続けることができます。
5.よくわかっていない海外PEファームの、”一人日本代表”を目指そう
これもある意味、”PE業界での成功”と言える、楽な割に儲かるパターンです。
ズバリ大手資産運用会社が日本に進出を開始した時に、オフィスを大々的に開設する前に一人担当者を置くポジションを得て、”一人支店長”として悠々自適に遊びまくる人々。
何せ本社サイドが日本にはどのようなLPがいて、誰がキーマンで、どのようなプロセスで投資されるのかなど全くわかっていないので、日本で一人やりたい放題のポジションが存在します。
これは、PE業界のLPサイドに意思決定者クラスの人脈があって、その資産運用会社の商品のなかでそれなりの安定リターンが期待できるプロダクトがあれば、心身ともに楽に稼げるポジションです。
このようなポジションを得る人の経歴上の特徴は、日系大手金融機関で世界中のPEファンドにLP投資するチームに長らくいた人が、業務中に知り合った海外PEファームかマルチアセットマネジャーで、日本での資金調達を始めたい会社にワンマン日本支社代表として雇われるパターンです。
しかもたくましいことに、「日本はグローバルに有名なファンドでも、新規に進出する際は人間関係・信頼構築に時間がいるから、3年は一円もファンドレイズできなくても解雇しないという契約で」などという条件で握って転職するので、”仮に1円も貢献できなくても年収3年分確定」という厚かましい交渉に成功した人もいます。
以上、特にPE投資家としての実績も才能もいまいちな人が、PE業界である意味”大成功”を収めるための5つのパターンを紹介いたしました。プライベートエクイティ業界の中で身の振り方を考える際に、御参考頂ければ幸いに存じます。