プライベートエクイティ転職の秘訣:アドバンテッジパートナーズ転職後の実態!

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コロナショック後もプライベートエクイティ業界は活況を呈している。資金調達額も増え、案件数も増加し、プライベートエクイティ業界への転職機会も急増中だ。以下ではストロングキャリアで長年、ボランティア講師陣の一人として、プライベートエクイティ業界転職志望者へのコーチングを提供して下さっている、アドバンテッジパートナーズのプロフェッショナルに、プライベートエクイティ業界転職市場環境及び、PE業界転職の秘訣、PE業務への適性の有無および、アドバンテッジパートナーズでのキャリア機会について、話を伺った。

プライベートエクイティ業界への転職機会:資金も案件もポジションも増えている

Q: お久しぶりです。本日はZ世代のキャリアでプライベートエクイティ(PE)について考えたいということでインタビューできればと思います。また、女性活躍という観点からも、Z世代の女性も交えながらお話を伺います。

最近は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急事態宣言もありますが、PEファームもオンラインで業務なさっているのでしょうか。それとも、やっぱり現地に行って仕事せざるを得ないのでしょうか。

A: 時期によって変わります。デューディリジェンス(DD)業務が佳境の時は、投資先に訪問する時間は少なくなります。そして、DD業務の方がオンライン対応しやすい作業が多い印象です。今週は自宅からのオンライン業務が多く、ゆっくりトイレに行く暇もありませんでした。いまも、家からインタビューに参加しています。

Q: そうなんですね!お忙しいところありがとうございます。まず、最近のPEマーケット環境についてお話を聞かせてください。他社の方々からも「第3次の業界隆盛期」と、数年前に比べてディール案件が圧倒的に増えていると伺います。実際のところ、どうでしょうか。

A: めちゃめちゃ忙しく過ごしています。ありがたいことですが。些細な例ですが、数ヶ月ほど髪を切る時間が作れていません。ほら、長いでしょう?

日本でも金融機関にとってファンドへの出資が一般に

A: 国内ではプライベートエクイティ業界だけでも、ここ数年、ファンドが増えました。昔に比べると、オルタナティブ投資という観点において、日本の一般的な金融機関からの資金調達がしやすくなったと思います。

かつてはPEファンドにお金を預けるというと相応の経験と勇気の要ることで、先進的な人たちが多かったのだと思います。でも、いまは、PEファンドは機関投資家にとって一般的になっていて、例えば地方銀行からも出資してくれるようになり、お金が集まりやすくなりました。その結果としてファンドの数が増えているのだと思います。

手段としての「M&A」が普及:お金も投資機会も増えている

A: 投資機会という観点で考えても、広義のM&Aのディールフロー(案件の流れ)が増えています。上場企業でもM&A仲介会社が増えていますよね。もともと、例えば事業承継M&Aなら、オーナーさんが自社を売るとなると相当な覚悟をもって次の人にバトンを渡さなくてはなりませんでした。

しかし、継いでくれる子供や従業員がいないとか、いても継いでくれないといった事情があっても、昔は継いでくれそうな人を見つける手段がありませんでした。悩みを抱え込んだまま社長さんが引退して、会社もなくなってしまうケースも多くありました。

でも、最近は先述の通り事業承継M&Aの仲介会社が増えています。そうした会社の活発な活動により、いままで埋もれていたような投資機会も表に出てくるようになりました。

大企業に関しても、例えば日立化成 (昭和電工がTOB(株式公開買付け)で完全子会社化)や米ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空機リース事業(アイルランドの同業大手・エアキャップと統合)のように、自分たちの基幹だった事業や、かつての祖業すらも売るのが一般的になってきました。このように、投資機会も増えています。

つまり、【お金も集まる】と【投資機会も増える】が同時に起きているので、業界そのものが凄く忙しくなっています。

プライベートエクイティ業界は、まだまだ成長する

Q: 5-6年前に地方銀行も出資するようになってから、このように「業界隆盛期」が始まったということですね。その次の波(業界興隆期)はどのように予想していますでしょうか。

もともと外国のファンドやファミリーオフィス(富裕層の一族による自己資産運用管理機構)が参入して「第1の波」となり、次いで保険会社や機関投資家(例:GPIF)が参入して「第2の波」となり、コーポレートガバナンス・コードの普及・定着に伴い地方銀行も参入して「第3の波」になりました。このあとも新規に参入してくるのは、どんなプレイヤーだとお考えでしょうか。

A: いま、私たちは約850億円のファンド(Advantage Partners Fund VI)を運用しています。実は投資家からのニーズはその規模を大きく超えていましたが、きちんと責任を持ってファンドビジネスをやりきれる規模という観点で、今回は、敢えて850億円としました。そういう意味で、「まだファンドにお金を預けられていない」LP投資家はたくさんいます。

また、「他の地方銀行もやっているから、我々もやろう」と参入してきた地方銀行が「これは良い!」と、さらに追加で出資してくることもあります。一方で、いまのところ撤退するプレイヤーはいません。各国の金融政策も相まって、出資者の事情の変化や「慣れ」によって今後も資金の流入トレンドは続くと思います。

Q: 新規参入や追加出資もある一方で、撤退するプレイヤーがいないので純増ということですね。

国内他社と比べても躍進を続けるアドバンテッジ・パートナーズ

Q: その850億円のファンドは国内・国外はどのような比率だったんでしょうか。

A: 半々くらいですね。ただ、我々がそうだったように、オーバーサブスクリプションでカットバックしているところが多いものの、ニーズの強さと言う観点で言えば、国外よりも国内がより強い印象です。国内だとファンドと投資家との距離が近いというのもあるのと、1号ファンド(MBI Fund I)からの実績で信頼が蓄積していって、お付き合いくださっています。

例えばアドバンテッジ・パートナーズなら4号ファンド(Advantage Partners Fund Ⅳ)はグロス・リターンで2倍(編集部注:同時期のPEファンドのリターンとしては高い水準)、IV-Sファンド(Advantage Partners Fund Ⅳ-S)や5号ファンド(Advantage Partners Fund V)は、3倍や4倍を超える水準が期待できそうです。

他にも、アジア特化のファンド(Asia Fund I)を3.7億ドル(約400億円)で組成しているのと、日本政策投資銀行とのアドバンテッジアドバイザーズ 成長支援ファンドもありますね。

Q: アドバンテッジ・パートナーズのトラックレコードは流石ですね。単独のファンド規模だけで見ると、後発のポラリスやインテグラルに抜かれているように思いきや、アドバンテッジ・パートナーズはマルチセットマネジャーとして、全体的・総合的に見ると存在感が強いですね。

A: そうですね。やはり国内のバイアウトファンドとして考えると、1,000億円は超えずに、800-900億円くらいで抑えるのが妥当という考えがあると思います。

日本はディール規模が大きい案件の数は多いとはいえず、ファンドの規模を大きくしてしまうと、EV(企業価値)で500-1,000億円の大きな案件に多数の投資家が殺到して、高値掴みするリスクを考える必要があります。

そこで、800-900億円くらいで抑えて、早く消化して、次のファンドに移行する考え方です。環境は変わり、投資方針にも拠りますので、一概には言えませんが、規模の問題は良く考えなければいけないと思っています。

Q: 国内PEファンドの先駆者として、色々なチャレンジをする中で、色々な検討がなされてきたということも頷けます。

プライベートエクイティのディールフローとバリュエーションのトレンド

Q: 最近はミッドキャップ(時価総額が10-50億ドルの中堅公開企業の株式)が人気ですが、いまバリュエーションとしてどのくらい上がったのでしょうか。

A: そうですね、インダストリーによります。

まず、海外は10倍が普通で、15倍もあり得ます。でも、日本だと普通の製造業は成長性が限定的であれば5-6倍くらいでしょうか。結局、あまり利益がグロース(成長)しないので、5年間のキャッシュフロー程度の入口になってしまいます。

Q: いまもエクスクルーシブ(排他的な)案件はあるのでしょうか。それとも、すべてオークションのように公開での取引でしょうか。また、レバレッジのレベルも最近はどうなっているのでしょうか。

A: いまはオークションが多いものの、エクスクルーシブな案件もあります。また、レバレッジ水準は、最近で言えば、銀行がサポートしてくれる案件であれば7倍くらいが上限でしょうか。かつてのように8倍とか10倍にはなっていません。

リーマン・ショックの教訓もあり、投資先の業界や分野によっては我々から相談しても、判断として手を出さない銀行もあります。

コベナンツ(契約の特約条項)も、昔のように無理はせず、案件ごとに、その特性に合わせて工夫するようにしています。

アドバンテッジ・パートナーズに転職する魅力: 転職してから分かった、職場としてのアドバンテッジ・パートナーズの実態

Q: 次に、職場としてのアドバンテッジ・パートナーズについて教えてください。PEファームが増えて、しかも大きなところもあるなかで、アドバンテッジ・パートナーズで働くことの魅力についてお聞かせください。

A: 私は他のPEファームを経験していないこともあり、1つ1つの要素で比べることは難しいものの、組織として分権的なファンド運営がなされていることは特徴と言えるかもしれません。ファンドによっては、絶対的な権力者がいる場合も聞きます。

他方、アドバンテッジ・パートナーズは、創業者として代表パートナーが2人(笹沼 泰助 氏、リチャード フォルソム 氏)いるものの、バイアウトチームは、今は喜多さん(喜多 慎一郎 氏)がリーダーです。2人の創業者は、大所高所からのファーム全体の活動に関与をしながら、新たなファンドの組成や新たなアセットクラスの検討に時間を使ったりしています。

その結果、いろいろなチャンスがファームの中に転がっています。バイアウトを極めるもよし、自分で案件を発掘して自分のものにするもよし、ファンドの組成に携わるもよしと、やりきることにコミットすれば、自由度は高いと思います。その際、いままでの蓄積も活用できます。それを使って、自分が選んだチャレンジに取り組めます。

Q: そう考えると、日本のバイアウトファンドで、「マルチアセットマネジャー」に脱皮できる」のはアドバンテッジ・パートナーズに限られるのではないでしょうか。

LP投資家が「日本のプライベートエクイティ業界を背負う存在」として、アドバンテッジ・パートナーズの長いサイクルを支援し続ける理由がよく分かります。

創業以来の実績と信頼に裏打ちされた資金調達と案件持ち込み

A: 結局、PEファームは究極的に「ドライパウダー(まだ投資に回していない資金)」、つまりお金と、良い案件のフローがあることが大切です。そういう意味では、ファンドの資金調達は昨年4月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前に終わり、多くの方々にお金を預けて頂きました。

また、ディールの様々なアドバイザや金融機関の皆様から多くの案件をご案内頂き、足下の投資ペースは、5年間で850億円のペースを超えています。ファンドビジネスとして大切な「お金の入口」と「案件のフロー」が非常に多いというのも特徴です。

アドバンテッジ・パートナーズへの転職に向いている人とは?: 多様な経歴の方々に門戸が開かれている・「自分がどういう人間でありたいか?」が重要

A:社内の人種はある意味で「多様」です。創業者はコンサルティングバックグラウンドであり、いわゆる「ザ・金融マン」ではありません(参考: 笹沼氏=事業会社や戦略コンサルティングファーム出身、フォルソム氏=戦略コンサルティングファーム出身)。

他のメンバーも、私のようにコンサルティングファームに務めていた者もいれば、他にも事業会社を経てきた者もいます。

また、銀行や証券会社の出身者や、元会計士もいます。リーダーのバックグラウンドが社内にも反映されている印象です。

Q: すると、やはり多様なバックグラウンドを持つプライベートエクイティ業界志望者のなかでも、特に役に立つのはそういった即戦力になりそうな投資銀行出身のバックグラウンドを持つ人たち、ということなんでしょうか?また、プライベートエクイティで活躍できる人・できない人の命運はどこで分かれるのでしょうか?

A: 投資銀行以外の出身者でも活躍できます。プライベートエクイティに志望してくる人の母集団は、確かに最近は証券会社出身者が多い印象です。その背景は、コンサルティングファーム出身者は、プライベートエクイティに加えて、GAFAやスタートアップも含めて、自身の次のキャリアを考えられている様です。結果、一時期より、コンサルティングファームからの応募は落ち着いている模様です。

プライベートエクイティ業界転職成功の秘訣は、「自分がどうありたいか」をよく理解していること

A: プライベートエクイティ転職時は、バックグラウンドだけではなく、自身の特性や生き様みたいな要素も大事かもしれません。特にZ世代のような若い方々なら「自分がどういう人間でありたいか」が大切なのではないでしょうか。

例えば、とにかく案件をやりたい・投資をしたいなら、証券会社等のアドバイザリ業務が向いていると思います。ディールを作ることは創造的活動ですが、ディールがクロージングしたら、一旦一区切りです。次の狩りに向かう。

他方、プライベートエクイティは何年も投資先企業の面倒を見て、エグジットするまで根気強く付き合わなければなりません。すると、数多くの投資に関与したい人がプライベートエクイティに来てしまうと、とにかくディールをやることが目的化して、見当違いな投資をしかねません。

また、人間関係の構築やコミュニケーションも、その瞬間でのインパクトが求められる場合も多い。そう考えると、一つの案件に長く関与するプライベートエクイティに対して、そういった動機で入り込むと、飽きてしまう・続かないので、プライベートエクイティには向かない気がします。

逆に、一つのことを、自分なりの価値観や考え方を持ってやりきりたいと思うような属性・生き方の人が向いているように思えます。

プライベートエクイティプロフェッショナルとしての「仕事の流儀」

Q: それでは、某テレビ番組のようですが、御自身の「プロフェッショナルとしての流儀・哲学」や、「自分だからこそ実現できたバリュー」のレシピはありますでしょうか。

A: 先ず、会社運営の両輪である「管理」と「所有」に対して、同時に適切なアクションを起こせる立場から、企業経営に関与し続けることを重視したい。それは投資先企業にとっても大切だし、自分にとっても楽しい「価値のある」仕事である要件です。これこそ、自分がいままでやってきたことであり、「これからもやりたいこと」だと強く思います。

そして、「チーム作り」こそ、バリューアップ活用の肝だと思っています。どれほど素晴らしいチームを投資先企業に作るか、ですね。でも、そこには一律の正解はありません。料理に例えるなら、プライベートエクイティの仕事は、高級レストランのシェフとして「最高の食材を集めて最高の料理を作る」ことではなく、「今冷蔵庫にあるもので、いかに旨いものを作るか」という発想が重要だと思っています。

もちろん、欠けている材料があれば、お米が足りなければ、買いに行く必要はあります。しかし、例えば、そこに固い肉しかなくとも、筋を切って柔らかくしながら上手く調理する、冷蔵庫にある材料からメニューを考える、といった世界です。

投資先には必ずしもピカピカのチームがあるとは限りません。社長が凄い一方で着いてくる従業員がいないとか、社長が代わったばかりで手厚いサポートが必要とか、様々な状況が考えられます。そのチームに合わせた、必要な補強をしつつ、全員が共有できる目標(例: 戦略、バリュー、ビジョン)を作っていくことが大事だと思います。

アドバンテッジ・パートナーズに転職してから役立った、コンサルティングファームや事業会社での「教訓」

Q: そのクリティカルなバリューを出すために、ご自身のキャリアを振り返って、「コンサルティングファーム時代にやっておいて良かったこと」とか、もしくは「事業会社やコンサルティングファームからプライベートエクイティに転職したいならやっておくべき・やっておくと良いこと」はありますでしょうか。

A: 先ず事業会社にいる方は、周囲を見回すと社内にいろいろな人がいますよね。ひたすら社内政治で価値を出そうとする人とか、コミュニケーション重視で手を動かさない人とか、手を動かすのにコミュニケーションは下手だから価値を出せない人とか。「人の有りよう」をパターン認識してみてください。

すると、例えば投資先でも、ある断面で切って考えたときに、アナロジー(類推)で「こういうタイプの人たちだ」「こんな組織だ」と分かるようになると思います。それって、実際に自分が事業会社にいたときの経験や記憶、また、コンサルティングファームにいたときのクライアントインタビューを通じて蓄積していく組織やマネジメントチームへの洞察が効いてきます。コンサルティングファームなら短い時間で様々な企業に触れることができますから、引き出しが増えるはずです。「ああ、あのときのチームに似ている」とか「この会社に似ている」といった具合ですね。

つまり、組織観察・人間観察が、ロジックとの組み合わせで必要な直観力を支える技として、活きてくるように思えます。

コンサルティング業界とPE業界を比較: 時間軸と立場の違いがもたらす影響

Zキャリアチーム野間: コンサルティングファームでのプロジェクトと、PEファームでのハンズオン支援を比べると、クライアント・投資先に関わる期間や、その期間による改善へのコミットメント度合いはどのように違うのでしょうか?

A: 非常に重要なポイントですね。コンサルティングファームだと各プロジェクトは短ければ1-2ヶ月、長くても半年くらいです。でも、PEファームだと長ければ、なんと10年くらい関わることもあります。

でも、共通して言えるのは「初速」、つまり最初の2週間、次の2週間でやっていくことは結構、似通っています。PEファームだとエグジットまでの期間は概ね5年前後ですが、最初の半年はしっかりと「チーム作り」をします。

そして、そのチームのメンバーに「任せる」フェーズが始まります。自分が食い込み過ぎてしまうと「自分がいないと回らない」状況を生んでしまうし、もしそうなって自分が抜けて組織が回らないようになってしまったら、真の意味で「バリューアップ(企業価値向上)」とは言えません。

最初は「その企業が知らないノウハウ」「その会社がやったことのないこと」はお手伝いするものの、「一周」したらその会社の人たちが自分でできるようにならなければいけません。ですから、そういう観点で、コンサルティングファームもPEファームも行う作業は近いものです。

組織に信頼されるようにヒアリングをしたり、飲み会をしたり、足繁くその企業に通ってミーティングがなくても机を借りて過ごしたりします。その信頼関係を構築して、組織やビジネスを理解して、課題を整理してアクションを明確にする部分は共通です。

プライベートエクイティ投資家とコンサルの根本的な違いは、「株主権力の有無」

A: 一方で、根本的に違うのはコミットメントの期間だけでなく、やはり「権力」の有無です。コンサルティングファームは相手をクライアントと意識して振る舞う必要があります。その関係性は主従が明確です。PEファームには「株主」としての権力がありますが、これは単純な主従の関係性ではありません。

株主の権利は、株主総会で取締役を選任する権利です。それは強いものである一方で、執行に対する権限や能力は限定的です。

従って、株主としての影響力を念頭に置きながら、一方で「取締役たちに何をやって貰うか」とか「どうやって取締役たちが気持ち良く働いてくれるか」を考えて、ある意味でクライアントのように持ち上げて、楽しく働けるような環境を作ることも必要です。

ただ、やはり強く振る舞わなければならないときもあります。その重層的な関係性のなかで、高度に「モードを切り替える」ことが求められるように思います。

プライベートエクイティ転職に比較的向いているのは、インダストリー軸ではなくファンクション軸で仕事を選びたい人

Q: PEファームにいると、投資先は自分で選べるわけじゃありませんよね。例えば「自分は自動車業界に携わりたい!」と思っていても、建設業界を担当するかもしれません。つまり、そのリスクを考えると、特定業界での明確な「やりたいこと」を持つ人が入るべきではないというか、業界関係なく注力したいポイントを持つ人が良い印象を受けます。その辺りいかがでしょうか。

A: 仰るとおりです。私はインダストリー(産業)の「縦軸」とファンクション(機能)の「横軸」のうち、後者の切り口で物事を考える人がプライベートエクイティ業界で続きやすいと思います。

もちろん、「この産業が好き!」という気持ちも良いと思いますし、大切です。しかし、それを動機付けにしてしまうと、例えばその業界が儲かるとは限らないし、案件で巡り会えるとも限りません。

すると、やはり組織作りやファイナンスパッケージといった「横軸」で強みを活かせる人や勝ちパターンを作れる人が長続きしやすいと感じます。

女性にとって、プライベートエクイティ転職がお勧めな理由とは?: 時間の自由度が高い!

Q: 引き続き、女性のキャリアとしてのPEファームについて意見を伺えればと思います。ずばり、女性にとってプライベートエクイティ業界はどんな選択肢だと考えていますでしょうか。

A: 実は本来的にプライベートエクイティ業界は「女性にとって働きやすい業界」だと思います。最近はアドバンテッジ・パートナーズでも産休を取って復帰する方もいます。しかし、まだまだ、フロントメンバーでも女性は片手で数えられるのみです。割合としても10~20%ぐらいなのではないでしょうか。

理由を考えるに、1つは「そもそもPEファームに辿り着くまでのキャリア構築・形勢の途中のルートにある職種に女性が少ない」ことが考えられます。コンサルティングファームや投資銀行といった、PEファームまでの「通り道」にある組織には、男性が多いということです。その理由は、それぞれ異なると思いますので、ここでは論じませんが、母集団の男性割合が多くなってしまっているということです。

女性の方が、キャリアを多面的に考えているように感じます。多様なオプションを見ながら、「自分のやりたいこと」や「目の前のチャンス」を重層的に考えているように見受けられます。結果、優秀な女性は色々な業種・組織に居る様に思います。

これに対し男性は画一的で偏りがあるのかもしれない。アドバンテッジ・パートナーズとしても、そうした母集団の状況を念頭に、更なる工夫はするべきで、先述の偏った母集団にしかリーチできていないとすれば、改善するべきなのでしょう。

本来、PEファームでの仕事は本来的に、働き方の自由度が高いのが特徴です。ディールプロセスの途中はバタバタするし、徹夜もある。一方で、例えば私であれば、子供の朝の保育園登園や、夜の塾の迎えをやっています。しかも、最近はオンラインでの業務も増えましたから、朝に子供を保育園に送った後、そのままスターバックスからミーティングに参加することもあります。役割にコミットし、成果を出し続けることが大前提ですが、その方法には多様性があるということです。

そういうフレキシブルな働き方は、働き方の自由度が高く、男女に関らず、その人なりのスタイルを確立すれば、子育てしながらでも長く活躍できる仕事だと思います。

例えばコンサルティングファームだと、クライアントの定めた時間軸のなかで全力疾走するビジネスですから、短期決戦の中で時間自由度は限られてしまいますよね。プライベートエクイティでは、もちろん即時に返信しなければならないメールもあるとはいえ、より長い時間軸での戦いであり、自由度はコンサルティング業界に比べて高いと言えます。

プライベートエクイティで働き始めてしばらくたてば、自分の「仕事の型」も出来上がるので、周りの信頼も相まって自分のスタイルで働けます。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による潮流も相まって、この自由度を活かした働き方が求められるようになりました。

PE業界を通じて予想する日本社会における女性進出の展望: 「女性なりのチーム作り」が増えてくる

Zキャリアチーム木下: PEファームから様々な業界を広く俯瞰的に見る立場として、社会全体として「女性の働き方」はどのように変わっていると感じますでしょうか?

A: まず、女性も含めた「多様性のある」チーム作りの必要性を実感している経営者が増えているように感じます。我々PEファームも株主としてそのような立場を強く打ち出すし、人材エージェントも自らのデータベースを利用して協力してくれています。従来に比べて「女性が活躍する組織」を作りやすくなっていると思います。

一方で、大手企業を始め古い組織は「まだまだ」な部分もあり、その組織自体が大きいこともあって、変化には時間がかかると思います。ある政治家は「女性の首相が誕生しないのは、女性議員が女性議員を支えられないからだ」という趣旨の発言をされていました。「女性なりのチーム組成」がしにくい現状の一側面を表していると思います。

発言自体に対する賛否は色々でしょうし、その様な集団は魅力的ではなく、そもそもお断りということかもしれません。ただ、その発言の背景は何か?ということを考えてみたい。それは、古い組織が、女性が活躍する組織になるためには、価値観の変化や、制度や運用上の不平等の解消だけでは不十分ということ。加えて、より多様な価値観の中で成果を出し続けられる人材層の厚みも必要、それは男女に関らず、ということだと考えます。私たちは、この時間がかかるプロセスを加速するサポートが出来ればと思います。

また、チームビルディングという観点では、古い組織は「男性社会」「ホモソーシャル」とでも言うべき、例えば飲み会コミュニケーション、会話というよりその場の同調圧力の下、お互いの力関係や依存性を確かめながら盛り上がるような人たちで形成されている組織が多いかもしれない、それは「古い」ですよね。

そんなプロセスに依存しなくてもチームビルディングはできるはず。 チームビルディングの多様性も必要です。飲み会やお茶会を否定するものではありませんが、だれが声がけするか、どこに行くか、何を話すか等を工夫するだけでも、もっと幅は広がるはず。

ジェンダー差別がより少なくなり、女性の社会進出が増々拡大する。その過程で「女性なりのチーム作り」の型が増え、より広く共有されている、されるべきタイミングだと思います。我々としても、それをプッシュしていきたいですね。

ところで、「プライベートエクイティ人生最高の投資案件」って?

Q: 本日は長時間、多岐にわたるお話ありがとうございました。ところで、以前に結婚式で私がベストマンスピーチをさせていただいた際、「この結婚が、貴方にとっての人生最高の投資案件でありますように」とメッセージを送らせていただいたと記憶しています。ファンド期間と同様の10年間の結婚生活を振り返られて、ご家庭のバリューアップの秘訣は何だったでしょうか。

A: 相手に過大な要求や期待をしない、ということに尽きます。相手を尊敬し続けることが前提ですが。

Q: 是非、うちのお嫁さんにも言い聞かせて頂きたいです。 本日は、ありがとうございました。