キャリア戦略に持ち込むべき、戦略思考とは?~コンサルとPE業界の事例

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キャリア戦略を考える時に意識したい、産業構造分析と、自分自身の戦略的ポジショニングを理解することの大切さに関して、解説致します。

キャリア戦略に持ち込むべき、戦略コンサルの戦略思考とは?

儲かる産業構造なのか

ハーバード大の著名なマイケルポーター教授のファイブフォースを知らない人はプロフェッショナル人材の中では少ないと思いますが、それを腹落ちして適用している人はそうはいません。詳細は省きますが、買い手(客)、売り手(供給)、代替品、新規参入、そして業界内の競争の程度で、その業界が儲かるかどうかがだいたいわかるというものです。

これを、例えば高収益で知られるマッキンゼーなどのトップコンサルティングファームに当てはめてみましょう。トップコンサルティングファームのサービスの買い手は大企業です。

世の中にコンサルティングファームはゴマンといるため買い手に対する交渉力は低そうですが、トップファームとしてのブランドを有しているのは一握りです。稼働率が高くて忙しいときはコンサルファーム側がクライアントを選ぶことが出来ますし、実際にそのようなことが起きています。

売り手は皆さんのような優秀な若手プロフェッショナル人材ですが、トップティアのコンサルティングファームは世界中からある意味で優秀な若者が押し寄せるので、売り手に対する競争力も強いと言えます。見方を変えれば大企業顧客と優秀な若者によるコンサルティングの、マッチングプラットフォーム的な側面もあるのです。

代替品や新規参入は、たとえばマッキンゼーであればベインやボストンコンサルティンググループなどが挙げられますが、先にプロジェクトを獲得すると、次からのプロジェクトは前のプロジェクトの成果に基づき行われます。よって実は最初の案件を獲得すればよっぽどそのケースでコケないかぎり、同時に参入障壁を築くことにも繋がります。

新興のコンサルファームやフリーランスコンサルが儲からない構造的理由とは

また新規参入業者がトップティアと見なされるグローバル・コンサルティングファームをつくるのは至難の業です。しかしながら、「せめてローカル市場に限ってはうちも戦える」ということで、コーポレートディレクションや経営競争基盤が、BCGなどからスピンアウトしたチームによりつくられてきたのでした。

すでに強い総合プレーヤーが支配している市場に参入するのであれば、サービス提供のセグメントを狭めて、その一点で勝てるよう集中投資するというのは戦略論の定石であるといえるでしょう。

いざコンサル業界内部の競争の激しさに関していえば、トップティアは上記のように強力なブランドと引き寄せる顧客・人材の質で競争から守られています。

これに対し、個人で始めるコンサルタントは同じような代替者が多いため、フリーランスのコンサルタントは例えMBB出身者でも、たいして儲からないのが現状です。これは顧客獲得はプラットフォーマーが行い、プラットフォーマーや顧客に対して交渉力が無いからだとも言えるでしょう。たとえばビザスクに登録して個人コンサルとして生計を立てられている人など、聴いたこと無いのです。

つまるところ、バイ・ネームで「この領域は貴方に任せる」というポジショニングないし、そのポジショニングを創るケイパビリティにより参入障壁を築けない場合、フリーランスのコンサルタントは全く儲からないキャリアに転落してしまうことでしょう。

競争のルールと戦略の重要性を深く理解しているか?

御自身が志望される業界の産業構造を理解した後は、その業界での競争ルールを本質的に理解することが大切です。

本質的に理解するということは、端的に「何の競争になっているか」を一言で言えるということです。たとえばホテル業界はダイナミックプライシングで稼働率を高める競争になっていたところ、エアビーの参入で完全にアセットオーナーにとっての稼働率を高める競争に変わりました。

交通サービスに関しても、タクシー会社は突如、既存の車の稼働率を高めるウーバーとの競争にさらされるようになりました。世の中はお金を掛けた割に稼働率が低いアセットが意外と多い為(車は一日の実に4%程度しか使われず、あとは駐車場に眠っている。)、今後もあらゆるアセットクラスで稼働率を高める競争が激化することでしょう。

自動車メーカーに関してはテスラがトヨタの何倍もの時価総額になっていますが、重いものを遠くまで運ぶという価値ではなく、炭素を減らす競争にパラダイムシフトしたことが本質的原因です。このように変化が激しい局面だからこそ、小手先のマーケティングやファインチューニングではなく、戦略的思考の重要性が増しているのだと言えるでしょう。

また、提供できるサービスの内容がサチュレーションを起こすと、もはや価格競争が始まります。その時、組織全体に価格を下げる工夫が自発的に生み出されるような組織力の有無が勝敗を分けます。

これは航空業界のLCC,中でもピーチなどがいい事例でしょう。志望産業を考える上で理解しておきたいのは、その業界のゲームのルールを一言で言えるかどうか、そのルールの上で競争に勝つために有利なポジショニングにいるか、それを創れるかで、勝敗の行方が占えるのです。

自分のポジショニングをどうするか?:バリューチェーンのどこで戦うのか?

同じような仕事や業界に見えて、やっていることやビジネスモデル、求められる強さが全く違うことに気を付けなければなりません。たとえばプライベートエクイティ業界ですと、お金を投資家から集めてきて、それを投資して、投資先のバリューアップをして、売却して、投資家に資金を返して、再度ファンドレイズという流れです。

そんな中、お金を集めてくるというところにだけ特化したアドバイザーである、プレースメントエージェントという仕事がありますし、投資家にどのプライベートエクイティファンドに投資するかをアドバイスするゲートキーパーという仕事もありますし、投資する先のプライベートエクイティファンドポートフォリオをつくるファンドオブファンドという仕事もあります。

プライベートエクイティファンド設立及び、設立したファンドの投資にまつわるリーガルカウンセラーや、ファンドアカウンティングを行うファンドアドミニストレーター、あとは節税の目的でつくられた海外の箱にディレクターとして就任し、形式上はその人が投資の意思決定をしているが実態はそこにいるだけの人、という役割もあります。

プライベートエクイティ業界で戦うための重要なポジショニングの軸とは?

それぞれがプライベートエクイティ業界のバリューチェーンの中で各々の役割を果たすわけですが、プライベートエクイティはファンドレイズと投資実行の両輪がバリューチェーンで最も重要な箇所です。

そこでは、マネジメントフィーを下げて価格競争しても仕方ない(重要なのは投資リターンである)ため、結局のところファンドレイズか投資案件先発掘での差別化に繋がる強みが重要となります。

それでは、他社が真似できないような投資案件発掘の組織的能力とはどのようにして身に付けられるのでしょうか。それには、「このファンドに任せれば、投資リターンだけでなく従業員や社会にとってもよい会社を創ってくれる」というブランド認知です。

従って、「どのような価値を追求して実装すれば、その会社が社会的によい会社であるという正当性を高められるのか」というアンテナとセンスも、プライベートエクイティ業界でのポジショニングを高める上で重要になってくるのです。

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