
新卒でも、コンサルとして活躍できるのか、と思われる方は少なくないでしょう。しかし、現場では、新卒は新卒なりにやることがたくさんあります。新卒で、コンサルに入った場合の、活躍する人の特質と、「まずもって上司にとって、やってくれるとありがたい仕事」を説明します。
入社直後から活躍する新卒コンサル5大成功ファクター
早稲田大学法学部の方よりご質問
新卒で戦略コンサルタントのプロジェクトに携わる場合、実務経験や現場感覚がないので顧客の本質的な悩みを理解する事に苦労すると思います。
そのような感覚や経験の不在を補い問題を解決するための工夫があればお聞きしたいです。
講師からの回答:新卒には新卒のメリットがある
向上心溢れるご質問ありがとうございます。顧客の本質的な悩みを理解したり、クライアントリレーションシップに責任を持つのは一義的には、顧客企業を担当するパートナーであり、シニアマネジャーの役割です。
しかしながらジュニア時代から顧客の本質的な悩みを理解しようという視点を持っている人と、上から降ってくる仕事をこなすだけの人では、コンサルとしての成長速度に大きな差がつくのは、言うまでもありません。
この意味で貴方は既に、問題意識の時点で一歩先を歩まれています。
経験が浅い若手コンサルが成功する為に大切な5ポイントとは?
感覚や経験の不在を補い、顧客の本質的な問題解決に貢献するには、以下の5ポイントが重要です。そしてこれらは、特に実務経験の長さにかかわらず、若くして貢献可能なポイントなのです。
①若さを活かしたファクトの徹底収集(現場に近い人からの生の声インタビュー)
②ステークホルダーの意見を反映させた資料の作りこみ
③若さならではの向上心と学習スピードの速さ
④クライアント・ファーストのインテグリティ(誠実さ、正直さ)
⑤チームワーク精神(他人を巻き込み、リソースを活用するリーダーシップ)
それでは以下で、各ポイントの詳細を見ていきましょう。
ファクトファインディングや「議論がもれなく紙に落ちている資料作成」は、新卒がすぐ貢献できる分野
まず第一にファクトファインディングは、デスクトップリサーチから顧客サーベイ、競合調査、社員インタビューに基づくので、比較的経験が無くてもできる仕事の代表格です。
高すぎる時給をチャージするわけにもいかず(それでも、高すぎる時給をチャージしているのですが)、パートナーの一日100万を超える単価を請求するわけにはいきません。
一日単価20万円くらいのアナリストやジュニアコンサルタントの初期の貢献分野はこれら「ファクトファインディングの調査系」なのですが、技術的な面でもモティベーションの面でも(調査系は、長らくやってると飽きるので、シニアコンサルは手を抜いてしまいがち)、若手に期待がかかる分野です。
ちなみに、たまにいるのがインタビュー力でめちゃくちゃ輝くタイプ。優秀なジャーナリストと同様、他の人に任せるより深く、「かゆいところに手が届く」レベルで聞き出す力がある人がいるのです。
ともあれ「他のジュニアコンサルに毎日25万円払うより、自分にまかせた方が、重要なファクトを拾ってこれる」という信頼感のある人は、パートナーの間でも引っ張りだこになるものです。
第二に、資料作成でも大きな差が出ます。これは単にファームのフォーマットがきちんと守られているとか、エグゼグティブサマリーがきちんとサマリーになっているとか(あまりなってないことが多い)、ストーリーラインがしっかりしているとかだけではなく、これまでの皆の議論がきちんと紙に落ちていることが重要になります。
これも、イケてるアナリストとそうでないアナリストで大きな差が出るところなのですが、プロジェクトチームにとってありがたいジュニアコンサルは、議論の内容が漏れなくきちんと紙に落ちているのです。
これに対し横着なコンサルは、自分が誘導したい方向にそった編集をしているか、ついうっかり聞き漏らしているか、理解していないところが勝手にカットされているので、「議論の内容が紙に落ちていない」ことが非常に多いのです。
人は自分の意見が反映されていないとオーナーシップを感じません。それを実行するモティベーションもわかず、「無視された」と思ってへそを曲げるものです。
だからこそ「この人に資料作成を任せると、ミーティングでの議論がきちんと紙に落ちている」という状況になっているコンサルは、やはりチーム全員に有難がられるのです。
一人前のコンサルに成長するために、学んでいくべきこととは?
第三に、学習速度の速さも非常に重要です。コンサルのプロジェクトは最初はその業界の勉強にかなりの時間を費やしますが、その勉強中も、コンサルタントはクライアントから高いフィーを貰っています。
私もジュニアコンサルの時は、「これまでは高い学費を払って勉強してきたが、遂に学費よりけた違いのお金を貰いながら、勉強する日が来たか」と感慨深かったものです。
コンサルはクライアントに貢献するためにも、またパートナー目指して順調に昇進するためにも、その適性の有無は、「学習速度の速さ」につきます。
この学習速度の速さは20代や30代前半の方が、シニアの年齢より勝っているので、まさに「経験が浅くても経験豊富なコンサルタント」に勝てる部分、むしろ勝たなければならない部分でしょう。
インテグリティはコンサルに限らずあらゆるプロフェッショナルファームで重要
第四に、インテグリティ(誠実さ・正直さ)の強さが挙げられます。例えばクライアントファーストという言葉はマッキンゼーでとくによく聞きますが、あらゆるプロフェッショナルファームでも(一応)標榜される言葉です。
このクライアントファーストというコンセプトは、クライアント企業が本当に悩んでいることを自分事としてとらえ、本当にその解決に資することにだけフィーやエクスペンスを使うというプロフェッショナリズムも含まれます。
とくにコンサルというサービスは目に見えない要素が大きく、無駄なプロジェクトを提案したり、無駄に豪華な出張に余分なお金を使ったり、またさぼろうと思えばさぼれる仕事なだけに、インテグリティの強さが仕事のクオリティに直結するのです。
この誠実さや正直さは、知識や考え方といった後で学べることではなく、OSレベルで染みついた行動特性ですので、経験の多寡にかかわらず、コンサルタントとして最も重要な資質の一つとなります。
リソースを調達し、生産性の高いチームワークを担保するリーダーシップ
末筆ながら一番重要なのが、この「生産性の高いチームワークを担保するリーダーシップ」です。
コンサルのプロジェクトの大半は、自分一人が賢ければどうとでもなる一人完結型のものではありません。実際にはクライアントから上司、同僚、部下、クライアントの顧客等々、様々なステークホルダーを巻き込んだものとなります。
そんなとき、ケースの質を最も左右するのが、多様なステークホルダーのコラボレーションを最も生産的なものにする「仕切りの上手さ」と、モティベーション付与の努力です。
多様なステークホルダーの、時に対立するインタレストの交通整理をしながら、関与する人々のモティベーションを絶変えてチームワークの生産性を高められるかどうかは、パートナー目指して成長する上で、最も早く学ばなければならないスキルだとも言えるでしょう。
以上、経験の有無にかかわらず、若手コンサルがクライアントに本質的に貢献するために大切な5つのポイントに関して解説させていただきました。御参考頂ければ幸いです。