プライベートエクイティ投資の仕事の本質~パートナー実務で最重要なLP対応の実態

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いざ貴方がPEファームのパートナーに昇進したら、どのような仕事が待っているのでしょうか?PEファームのパートナーの最も重要な仕事は、LPから資金調達することです。この観点を意識して仕事できる人、面接できる人は説得力が大きく異なります。以下ではPE転職対策テキスト内の、「LP投資家との典型的議論100パターン」の中から一部抜粋し、単にPEに転職するのではなく、パートナー目線で何を意識して投資活動をしなければならないのかを論じます。(写真はPE転職対策テキストより)

プライベートエクイティのパートナーの仕事で最も大切なのはLP対応

プライベートエクイティファンドでパートナーになると、最も重要な仕事がファンドレイズになってきます。

PEファンドにとっての営業とは、投資先のディールソーシングだけでなく、LP投資家からの資金調達に他なりません。(この両者は両輪であり、投資が上手くいくから資金調達ができ、それができるから投資ができるという循環になります。)

そのためには実に多様なLPからの質問・データリクエストに答えなければなりません(面倒くさいデータはファンドアドミとIRの仕事ではあるのですが)。

当該市場の投資動向に関する質問はお馴染みのFAQ

LP対応でおなじみの質問は、投資対象市場の動向です。

日本のバイアウトファンドであれば、日本のバイアウト市場の魅力について延々と説明するのですが、これがLPの視点からすると、非常に退屈なのです。

それは何といっても、どこのファンドも言うことが、判を押したように同じだから。

やれ日本は事業承継がどうのこうの、やれM&Aの割合がGDP対比、欧米の何分の1でなんたらかんたら。

やれコーポレートガバナンスコードの改正で、大企業はROEを上げるプレッシャーを受けているどーたらこーたら、と、約20年くらい同じような話を、どこもかしこも言っています。

ちなみに経済メディアでPEファームのパートナーが受けるインタビューも、メディアをマーケティングに使おうと思っているので、同じように退屈な話しかしないことが多いものです。

どのGPに対しても同じ質問がされるだけに、より正直で奥深く、真実を述べることが重要です(もちろんマーケティングなので、だから魅力的だという落としどころにならざるを得ないのではありますが)。

そして厳しい競争環境にもかかわらず魅力的なリターンを作れるという話をするのが、そのファンドマネジャーの腕の見せ所となります。

年金基金は、ゲートキーパーが聞くのと同じようなことを金太郎飴の如く聞いてくる

さて、このLP投資家の質問ですが、GP側でLP投資家の質問を受けていると、焦るほど皆、同じことを聞いてくることに驚くことでしょう。

これは、年金基金などはゲートキーパーと呼ばれるアドバイザーにファンド投資の仕方やお作法を習う上、ILPAという国際的なLP投資ベストプラクティスを発表する機関が統一的な方法論や見解を発表しているためです。

結果的に皆が同じような視点で、同じような質問をし、同じような評価をして、同じようなファンドに投資するのです。

逆に言えば、アドホックでユニークな質問などほぼありません。そこで通常のLPからの質問はこの100パターンに収まる、とFAQをプライベートエクイティ転職対策テキストで全て解説してありますので、御関心頂ける型は是非ご参考ください。

投資家は、投資先の投資倍率の源泉など根掘り葉掘り聞いてくる

LP投資家が根掘り葉掘り聞いてくる中で、私が最初に驚いたのが、「市場のリターンの源泉」を聞かれた時です。

いや、各案件ごとに、リターンの源泉の何%がEBITDAの伸びで、何%がレバレッジで、何%がマルチプルで、、、というのは出せますが、市場全体の平均ないし中央値的なリターン源泉を出して、一体何の意味があるのだろうと。

そもそも案件数も少ないうえ、一部の大型案件が平均値をゆがめることも大いにある中、そんなこと聞かれても困ると思ったものですが、それでも国際的に資金を分散するLP投資家としては、どの市場のどのアセットクラスは、どのようなリターン源泉が期待できるかという大体の数字を必要としているのです。

こんなとき、「そんな数字の御遊び、意味ないですよ」とピシャリと本音を言ってはいけません。

LPからの印象を良くするべく、迅速にマージャ―データやら日本バイアウト研究所のSさん(日本PE協会のパーティー等に行くと遭遇する)のマニアックな案件追っかけレポートも参考にしつつ、その意味あるかないか定かではない、おそらくないであろう数字遊びにも、誠心誠意お付き合いするのが大切なのです。

PEプロフェッショナル個人にとっては、優良投資案件の責任者として認識されることが重要

さて、ここで注意したいのは、各案件を根掘り葉掘り聞かれるときに、誰がディールソーシングで主要役割を果たし、誰がバリューアップで主要役割を果たし、誰がエグジットを担当したのかをしつこく聞かれることです。

これは、PEファンドへの投資は、ポートフォリオもパイプラインもないのに何十億、何百億と投資するわけですから、一にも二にもチームへの投資であることに関連しています。

仮にそのファンドが良好なリターンを過去に挙げていても、その主要案件の担当者が退社していたら、過去の実績はあてにならないと判断されるのです。

言い換えれば、そのファンドのトラックレコードのコアをなす案件に参画して主要な役割を果たせば、LPコミニュティで自身の名声を轟かせることができるようになります。

そして徐々に自分をバイネームで支持してくれるLP投資家を得て、独立→自分のファンド設立への道が開けてくるのです。