
マッキンゼー、BCG、ベイン、アクセンチュアといった戦略コンサルティングファームが志望者に求めている資質、志望動機を上手くまとめている事例を紹介します。
大学/大学院( 東京大学 )
学部( 教養学部 )
氏名( KN )
第一志望はどの会社ですか? ( ベイン&カンパニー )
1 なぜこの会社を志望していますか?
候補者回答 ■なぜコンサルティング業界か?■
私は大学入学時、漠然とですが日本を変えるべく大きなことをしたいと考え、科学者を目指しておりました。
しかし、調べれば調べるほど科学者の不遇を知り、ではどうすれば良いのかと考えた結果、科学者、研究者を活かすのは企業の戦略に他ならないという結論に達しました。
企業の持つ技術、知識を120%活かし、且つ継続的に発展させたい。これがこの業界を志望する理由です。
Strong Careerからの解説: 他の選択肢と比較してなぜコンサルかを説明できるように
まずまずである。東大理系の人のコンサル志望動機に増えているのが、この手の「科学者、研究者の技術を市場でもっと活かせるのはコンサルだ」という話の展開だ。
ただ技術、知識を市場でより活かすための仕事は当然コンサル以外にもたくさんある。たとえば官庁で知的財産戦略をやったらどうか、最近増えている、企業の知財部で働いたらどうか、などなどだ。
これらとの比較でもなぜコンサルなのか、というのも突っ込まれたときのために用意しておくとよい。(そんなの、世間知らずの若者相手に必死につっこんでどうするの、という気もするのだが、ここに拘るのが癖と化しているコンサルも存在するため。)
候補者回答 ■なぜ御社か?■
□ 結果主義への共感。私は高校生の時にパースによって提唱されたプラグマティズムという思想を知り、感銘を受け、以来実生活における信念の一つとしてきました。
□ 例えば、私は大学入学と同時にボクシング部に入り、今では主将を務めていますが、常に「勝つためにはどうすればいいか?」ということを考えて練習しています。
□ 私の精神面での根幹である結果主義にこだわる御社で働きたい。これが御社を志望する理由です。
解説:会社が重視する価値観と、自分の基本的価値観のフィットを巧みに説明
この辺から、彼は「ただモノではない」感をぷんぷん出している。
一つ目への回答も実体験に基づいていて上滑り感が無かったのが良かったが、2つ目の質問では1.志望先が重視する価値観に対し 2.自分がなぜそれを重視しているのか 3・実際どう実践してきたのか が巧みに説明されている。
会社と自分の基本的な価値観のフィットをうまく説明できている。
2 その会社に活かせる、あなたの強みは何ですか?具体的にお答え下さい
候補者回答 ■幼い頃から培った統率力■
私は昔から人からの信頼が厚く、生徒会に推薦されたり、応援団で団長を務めたりしました。
そして、今もボクシング部で主将を務めております。皆の信頼が得られるのも「皆に意見を聞き、皆が納得するような方向に誘導する」という方針ゆえだと思います。今まで培ったこの統率力を社会に出ても発揮していきたいです。
解説: コンサルで求められる強みを、具体的に体験に基づき説明
彼はリーダーシップを挙げるのみならず、団長、生徒会、ボクシング部主将の説得力ある具体例で周囲からの信望を示している。
皆に意見を聞き、皆が納得するような、、というのも、コンサルで求められる本質的な強みである。
しかもそれを活かして会社でもそのような”人の意見を聞き、納得解を出し、信頼される”タイプのリーダーシップを発揮して貢献すると、感じの良い抱負を語っている。
候補者回答 ■ボクシングで培った強い精神力■
大学入学時、精神面を鍛えようとボクシングを始め、予想以上の成長がありました。常に自分に厳しくなければ決して上達しません。
限界だと思っても、真の限界のせいぜい八割程度、ということを悟りました。
また、減量時に自分の内面と向き合うことで、人間的に大きく成長できたと思います。このように、幾度も極限状態を乗り越えた私は、どんな困難な状況に対しても臆することなく平常心を保てます。
この得難い経験はこれからも自分の支えになってくれると信じています。
解説:成長志向の強さ、自己規律の強さを具体的にアピール
ここが彼の輝くポイントである。彼はここまでで、単なる知性だけでなく、今までの回答の中でビジネスに必要な「信望」「リーダーシップ」そして「極限まで頑張る精神性」を示している。
その精神力を示す具体例は、単にボクシング経験を話すだけで終わらず、「どんなに努力しても、しょせん80%程度」という興味深い「いい話」で私を感心させてくれた。(この「感心させてくれた」という感覚が大切なのだ。)
このボクシングというユニークな経験から、コンサルでの強みに繋がる本質的要素に上手く繋げていることが重要なポイントである。
彼の一連の説明からは、コンサルとしての成長に不可欠な成長志向の強さ、自己規律の強さがひしひしと伝わってくる。
3 あなたの弱みは何ですか?
候補者回答
私はよく人から優しすぎると言われてしまいます。これはつまり「論理的にはおかしいとわかっていても相手の意見を尊重してしまう」ということです。
私生活では今まで支障はありませんでしたが、ビジネスの世界で情にほだされることは莫大な損失を生みかねません。
思いやりをもちつつも、論理を最優先させたい、というのが私の理想のビジネスパーソンです。
解説: 弱みを聞かれたら、1・深い自己認識を示しつつ 2・逆に強みをさりげなくアピール
ちょっとしらじらしいが、彼は大きな失点をしない。
「人が動くのは論理だけではなく、基本的な信頼関係や感情がもっと重要だと様々なリーダーシップ経験で痛感したので」といったストーリーはコンサルのみならずあらゆる仕事で重視される人間的成熟度である。
時に優しすぎて断れない、否定できない、、系の話は、ペコパのように「傷つけないつっこみ」が全盛期を迎える今の日本で好まれるスタンスではあるが、面接で言うと「またこれか!」という白々しさが漂うのも事実だ。
もう少し深く自分の本質的弱さに向き合う自省心と、言いにくいその弱さを伝える自己開示を見せるとより好ましくなるものだが、彼は大きな失点することなく、「裏返せば強みでしょ」というアピールに繋げている。
4 いままでの人生で、最も大きな達成事項は何ですか?
候補者回答 ■怪我を乗り越えデビュー戦勝利■
大学一年生時に行われたボクシングのデビュー戦勝利の瞬間に最も達成感を感じました。以下その経緯と理由をご説明いたします。
昔から勉強もスポーツも人並み以上にできた分全てが中途半端になりがちだった私は自分の限界を打ち破るべく大学入学後ボクシング部に入部しました。
その後半年で先輩と互角のレベルにまで成長し、将来的には全国も目指せると、大きな期待をかけられていました。そんな矢先に足を痛め三週間を棒に振り、復帰直後には鼻骨骨折という大怪我を経験し、ボクシングをやめようかとも悩みました。
しかし自らの内面と向き合い、怪我の原因は慢心、自分への甘えのせいだと悟り、その日から一切甘えを捨て、謙虚な心を持ち誰よりも練習しました。
その結果、見事デビュー戦を白星で飾ることができたのです。私が努力する原動力は、あの瞬間の喜びを味わうためと申し上げても過言ではありません。
解説: 困難を克服した原体験を面接で伝えるのはお決まりの定石
彼は既に余裕でのトップ内定レベルで来ているところに、さらに加点を積み重ねる。
まず文武両道ぶりを、あまり嫌味なく自然に伝えられている。
次に、挫折経験を、あまり深みは足りないが、それでもそれと向き合った悩みを自己開示している。これで、人物像を浮き上がらせること、パーソナルなコネクションをつくることに成功している。
最後に、反省してさらなる努力と飛躍に繋げた体験を効果的に解説している。
彼はボクシングの初戦で勝ったというイベントが、自分にとってどのような意義があるのか、効果的に解説することに成功している。
よく「私は大した経験がないので、どうしたら、、」という人がいるが、過去の人生を振り返って出来るだけ一番苦しんだ経験を突き詰めて優れた洞察を発揮してほしい。本当に苦しみ、それを克服したのなら、そこには「他人にアピールできる」貴重な洞察が隠されているはずだからだ。
(逆に悩んだだけ、苦しんだだけなら気の毒な人生やったね、、という暗いイメージだけが残ってしまい、特に教訓にはならないので気を付けよう。)
5 いままでの人生で、最も難しかった決断は何ですか?
候補者回答 ■一流私立を蹴り二年目の浪人生活へ■
私は、高校卒業後二年間浪人生活を送りました。
二回目の受験で合格した私立大学に入学するつもりだったのですが、入学直前で苦しい家計状況の事や、初めから専門の決まっている私立では自分の可能性を狭めてしまうと考え、入学を辞退して独学で勉強し一年後に今の大学に合格しました。
非常にリスクが高い決断でしたが、合格という結果を追い求めてそのリスクを克服できました。
解説:すべて順風満帆でない方が、応援されやすい
ま、悪くないがしょぼい感じもする。しかし良いのは、全てボクシングネタで押せばボクシング馬鹿みたいな印象になりかねないところ、多様なトピックを混ぜてきているのは上手いといえよう。また苦しい家計だった、2浪したと苦境を交えることで、判官びいきの大人の支持を買いやすい話をしている。
6 10年後は何をしていますか?
候補者回答 ■スーパージェネラリストに■
3~4年後までに自分の専門分野を確立し、10年後にはその確立した専門分野についての知見をより深めてスペシャリティを持ったジェネラリストになり、「この分野ならあいつにまかせれば大丈夫」と言われるような人間になっていたい。
行動規範となる信念を持ち、独立のための具体的な計画を立てていたい。
解説:10年後のビジョンを聞かれたら、そのビジョンに今の志望動機がどうつながるかも解説
彼は初めて、凡庸で退屈な回答をしているが、それでも他の回答とバックグラウンドを鑑みると、このくらいの失点で内定が覆るわけではない。
長期ビジョンは、いまの会社への志望動機と不可分に結びつくことを覚えておこう。要するに、10年後の話を聞かれても、当然「だからベインが最適のオプション」という話をするのが大切なのである。
なお、具体的にこれをやりたい、と言い切ることができないのが大半なはずなので、彼のようにT字型(エキスパタイズのあるジェネラリスト)でかつ、行動指針が固まっている人、といった「満たしたい抽象的な特徴」の要件をいくつかいうことになるのは、これもオーソドックスな展開である。
7 他にどのような会社/業界を志望していますか?
候補者回答 ■ユビキタスの実現を■
私の中にはジェネラリスト志向とスペシャリスト志向(ジェネラリスト志向よりかなり小さい)という二つの考えがあり、前者の夢が大まかに言えば「世界一の日本ブランドの育成」後者の夢が「ユビキタス社会の実現」です。
前者の志向によりコンサルティング業界を志望していますが、後者の志向によってIT業界を志望しています。
解説:他の業界を聞かれて、まったく関係ない業界を言うと、いまの業界への志望動機が疑われる
これは、結構お花畑な印象であり、なによりこれまで打ち出してきた人物像や一貫性が瓦解するリスクのある回答である。下に出てくる「自分を雇わなければならない理由」で言っていることや、今まで言っていたこととややかけ離れた「もうひとつの選択肢」である。
あなたはどの質問に答える時も、全体として放っているメッセージとの整合性に気をつけなければならない。
8 あなたを弊社が、雇わなければならない理由は何ですか?
候補者回答
第一に、私には「複数の日本企業を世界一に育て上げ、それらの企業による業種の垣根を超えた超巨大コミュニティを作る」という夢があります。
その夢は御社のビジネススケールと同等か、それ以上になる可能性があります。つまり、私が御社で夢を追いかけていくことは御社の成長にもつながるというわけです。
第二に、私にはボクシングで鍛えた強い精神力があり、どんな困難状況にもへこたれませんし、逃げません。アサインされたプロジェクトは最後の最後まで妥協せず誰もが納得するものを完成させ、御社に利益をもたらす自信があります。
解説:「他の候補者にくらべ、なぜ自分を雇うべきか」への答えを端的に用意しておく
浮世離れした大きなお話を聞かせてもらった。青いな、と感じるとともに、大志を抱いた若者に接することができて、いい気分である。
面接では最後に、いろいろ1時間ほど会話しましたが、結局この人を雇うべき理由としてチームに共有すべきはこの1,2,3の理由です、というイメージが、相手の頭の中に湧いていなければならない。
9 最後に何か、質問はありますか?(会社にどのような質問をしていますか?)
候補者回答
(1)一年目での裁量権はどれほどか?
(2)自分の関わるプロジェクトは選択できる権利が多少なりともあるか?
(3)評価の基準は?
など
解説:志望先が自分を雇いたくなるような、最後の質問とは何かを考える
彼はつまらない質問をしている。Bainはこの質問を聞いて、貴方を雇う理由が増えるだろうか?他のトップティアの皆さんの優秀な質問を参考にしてほしい。
なお、いきなり裁量権やあなたのプロジェクト選択権の話をきくなど、本心では聞きたくても、一番下っ端でこきつかわれようとしている人が聞く話ではない。
いかにも使いづらそうな、プライドの高い人物像を思い浮かべさせてしまう。
あなたは当然、“何を振ってもらえても自分の仕事を増やすことは経験が増え、その経験こそが私の報酬なので、何でもやらせてください!”スピリットを漂わせなければならないのだ。
10.投資銀行/戦略コンサルに提出しているエントリーシートに提出した書類から、一つエッセイを選び添付してください。(御題:なぜ経営コンサルタントになりたいのか?)
候補者回答 ■日本の企業を世界一に■
経営戦略について興味を持ち始めたきっかけは、青色LEDの訴訟問題でした。
「科学者のできることは有限なのでは?」と科学の無限の可能性を信じていた私は衝撃を受け、考えた結果、科学者を活かすのは企業の戦略だ、という結論に達しました。
また、私には日本企業を世界一にしたいという夢があります。BRICsなどの台頭により競争が日々熾烈になっている世界経済の中で、日本企業の持つ技術、知識を120%活かし、且つ継続的に発展させ、世界一にする、という戦略家に絶対なりたいのです。
解説 &余談
たまに垣間見せる幼稚さが、もはや可愛げのレベルに私の中では達している。「絶対なりたいのです」などは私はかわいらしいと思ってしまった。
さて、この「日本企業の成長を助けて世界トップ企業をつくりたい」系の話は、コンサル志望者に恐ろしく多い志望動機である。たいてい、これまでそんなこと全く考えたことないし、それに関する活動もやったことないのに、とつぜん面接対策でそんなことを言い出す人が多いので、仮にこれまでの人生でやってきたことでその想いを証明できないなら、より自分の過去の実際の行動とリンクする志望動機を語った方が説得力が高くなるのは、いうまでもないだろう。