
ベイン、マッキンゼーといったコンサルファーム出身者が創業時から多かったアドバンテッジパートナーズと、ゴールドマンサックスのパートナーが創設したユニゾンキャピタル。創業時期やその後のファンドサイズ、投資対象領域など共通点が多い両社ですが、その投資戦略やカルチャーには明確な差もあります。MBBやゴールドマン、トップMBA出身者が転職面接に臨む前に、知っておきたい5大比較ポイントを現役のPEプロフェッショナルが解説します。
1.投資チームの人数と、投資先への関与の仕方が違う
アドバンテッジパートナーズは投資チームが50人を超えています。
これは、小型企業へも投資し、かつ現場に社員をべったりはりつけるので、投資担当者が他社のアプローチに比べてより多く必要であることの現れです。
これに対しユニゾンキャピタルは投資チームが20人程度の少数精鋭体制です。
これは基本的に小型企業には投資せず、ミッドキャップバイアウトを中心にしているからと、投資先の経営チームの一員として投資担当者を送り込むような参画モデルをとっていないからです。(ちなみにMBKパートナーズなども同様のアプローチ)
ちなみに日本のバイアウトファンドですと、ユニゾンもベインキャピタルもカーライルも同じような投資プロフェッショナルの人数です。
このことからも、投資プロフェッショナルの人数という意味ではアドバンテッジパートナーズが際立っています。(だからこそ、入社数も退社数も他社に比べて多くなります。)
2.創業パートナーの出身が、ファームのカルチャーの違いに
ベイン出身パートナーが創業したアドバンテッジパートナーズには、コンサルカルチャーが色濃く反映されています。
それは投資先ポートフォリオの経営への関与にしてもそうですし、投資判断時のバリューアップ方法検討に関してもそうです。
たとえば金融出身者であれば「市場環境を鑑みて手を出さない」系の案件にも、「戦略とオペレーションを変えることで何とかして見せる」というカルチャーが強いので、上手くいけば「他社が手を出さない案件を大化けさせた」に繋がるリスクも孕んでいます。
しかしこれが逆に転べば、「いくら経営を良くしてもマクロ環境が逆境のセクター・企業に手を出したので、何年も苦労した割に大損した」というリスクに繋がります。
これに対しゴールドマンサックス出身者が創業したユニゾンキャピタルは、「古き良き時代のゴールドマンサックス・パートナーシップカルチャー」が根付いています。
「我々は一流の仕事をするのだ」という昔のJPモルガンの有名な言葉を重視するファーストクラスカルチャーの元、投資先への参画は投資プロフェッショナルではなく経営の専門家の招聘と、投資先のガバナンスの強化でアプローチします。
2020年に、日本のプライベートエクイティ業界のレジェンドとも称される創業パートナーが引退したものの、創業時から共にいる”若き創業パートナー”のリーダーシップのもと、「最高のガバナンスシステムを投資先に創りこむ」ことにこだわった投資戦略がとられます。
なお現在、プライベートエクイティ各社で、投資先のオペレーション改善能力を示し、強化するべく、様々な改善競争が行われているのは業界全体の発展にとって、歓迎すべき競争だと言えるでしょう。
(KKRキャップストーンのように、社内に投資先バリューアップチームを抱える方向に、ファンドサイズが十分で予算に余力のあるファームは舵を切っています。)
3・労働時間が違う
上記の違いは、両社における労働時間の違いに反映されます。
コンサルカルチャーが強いアドバンテッジパートナーズでは、各投資担当者は昼夜問わず投資先にコミットすることになります。おそらく日本のPEファームの中で、最も労働時間が長いファームの一つでしょう。
これに対しユニゾンキャピタルは他の多くのPEファンドと同様、基本的には月次の取締役会での関与が基本で、投資先の内部に入り込んで現場で一緒に働くことはありません。
結果的に、早く家に帰れる人が多いファームともいえます。
だからと言って決して、別に楽してさぼっているという意味でもありません。
ユニゾンキャピタルは総じてゴールドマンサックスとマッキンゼーカルチャー出身者が多いため、両社で重視される「人の時間を無駄にしない、効率性重視」のカルチャーが浸透していると言えるでしょう。
4.ファンド成長の方向性が違う
ユニゾンキャピタルは長らく、ミッドバイアウト特化型のプライベートエクイティファンドとして成長してきました。
その後韓国においてもミッドキャップバイアウトファンドを設立し、日本進出にも成功した某ベバレッジリテールチェーンをはじめ、日本の飲食業界投資成功で養った知見を市場構造の似た韓国でも展開することに成功しています。
また近年では有力ベンチャーキャピタルのグロービスキャピタルとの提携も発表しました
これに対しアドバンテッジパートナーズは国内ミッドキャップバイアウトファンド一本から、上場株のSignificant Minorityに投資するPIPEsファンド、また中華圏や東南アジアに投資するアジアファンドへの拡大に成功しました。
私の友人はアドバンテッジパートナーズのPIPEsチームからシンガポールオフィスに移り、東南アジアを駆け巡り様々な投資をしています。
本人が東南アジアの成長市場でのキャリアを望んでいたので、非常に幸せに働いています。彼にとっては、APでこのポジションを選ぶことが、非常に重要なターニングポイントになったことでしょう。
このように、「自分のキャリアビジョンとファンドの成長の方向性が合っているかどうか」も、入社後のモティベーションとパフォーマンスに大きな影響を与えます。志望先ファンドの方向性をよくよく見定めたうえで、転職先を考えましょう。
5.得意な投資先・バリューアップのパターンが違う
投資先の選定や得意分野は、各社の過去の投資経験に大いに影響を受けます。
これは第一に、似たような業界でのバリューアップの知見を活かせるからです。
第二に、ディールソーシングにおいても仲介業者が「アドバンテッジパートナーズは前に自動車部品の投資をしていたから、、」などと同じような案件を持ってくるのです。
また企業の売り手を口説くときも、「過去に同様の案件で成功実績がありますから」などと、過去のトラックレコードが活用できるからです。
第三に、過去に失敗したセクターへの投資は避ける傾向があるためです。
結果的に創業時期や戦略が似たようなファンドでも、その後の投資対象企業の違いが、両社の得意分野やバリューアップパターンの違いに繋がっていきます。
また第四に、バリューアップのパターンという意味でも、過去の成功体験・失敗体験に影響を受け、特徴が分かれてくるものです。
たとえば不採算ノンコアの売却での成功体験が強いファンドは、同様の機会を探しますし、逆にマーケットシェア3番手に投資し、そのオペレーションと市場シェアを改善したのちに、業界一位と二位に売り込んでオークションに持ち込み高値でエグジットすることができたファンドは、同様の機会を今後も求める傾向にあると言えるでしょう。
このようにして、両者の間には外部にいる人からはわかりにくい、戦略・カルチャーの違いが形成されてきました。
ほぼ同時期に日本のPE業界のパイオニアとして出発したユニゾンキャピタルとアドバンテッジパートナーズですが、上記の違いへの理解が、両社への転職を考えられる皆様のご参考になれれば幸いです。