独立して自分のプライベートエクイティファンドを創設するための5大条件とは?

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プライベートエクイティ業界での一丁上がりとは、人の定義とPEキャリアに求めるものにもよりますが、総じて”雇われパートナー”ではありません。自分のファンドを創設し、大きく育てることを目指す人も、数多く存在します。あなたがカーライルのアジアヘッドだったとしても、ローンスターのMDだったとしても、モルガンスタンレーPEのヘッドだったとしても、自信があればあるほど、一国一城の主を目指したくなるものなのです。私はLP投資家の立場で上記の新興PEファンド独立に携わったことがあり、その特徴を解説します。

前回のコラムで、せっかく著名PEファンドのパートナーに昇進したのに退社して独立する人々の話を解説しました。今回は独立してPEファンド創設に成功する人の5大特徴を以下に解説致します。

1.プロの機関投資家LP好みのトラックレコードを有している~プライベートエクイティファンド創設・独立の可否は、トラックレコードの有無が決定的に重要

独立後のプライベートエクイティ業界でのファンドレイズは、独立前のトラックレコードが全てです。

PE業界は年金アドバイザーやファンドオブファンズが、ほぼ固定化したファンド評価フレームワークを有しているので、どの投資家からも聞かれる内容が驚くほど似ています(、、というか、ほぼ同じです)。

そして最後は結局、”これまでの質疑応答は、実はいらなかったやんか!!”と思ってしまうくらい、トラックレコードで成否の大半が決します。

あとのQ&Aは、それだけで決めてしまうとLP投資家としての存在意義が無いため、後付けでもっともらしい説明をするために、一連のいらん質問の数々をしているようにすら思えるくらいです。

ただ、トラックレコードと言っても単にリターンが高いだけではLP受けしないことも。

リターンの安定性や、リターンの源泉や、どれだけ本当にあなたがかかわっていたディールなのかが根掘り葉掘り調べられます。

よって将来独立して自分のPEファンドを創ろうと思っている人は、在職中に先回りして”いったいどのような観点でトラックレコードがLP投資家に精査されるのか”を知ったうえで、毎日の業務に臨むとよいでしょう。

参考:GPのパートナーとLP投資家の典型的Q&A100大パターン(PE転職徹底対策テキスト第五章)

2.競合ファンドに勝るチームのクオリティ~日本のバイアウトマーケットで最強のチームだと言い張れるか?(少なくとも同様の戦略をとるPEファームの中では)

プライベートエクイティファンド、特に新たに設立された、ないしされようとしている新興ファンドが資金調達するには、一にも二にもチームのクオリティが重要です。

パートナーの質、ディレクターの質、アソシエイトの質、ファンドアドミの質、またキーマン達がかつてどこでどのように、どれくらい一緒に働いてきた間柄なのか。

プライベートエクイティは一つのファンドの寿命が10年以上と、異様に息の長いアセットクラスです。だからこそ、チームが途中で空中分解しないよう、その相性が合っていることが過去の経緯から証明されていることが重要になるのです。

逆に、最初のファンドで、ファーストタイムチーム=一緒に働いたことのないチームであれば、チームリスクが敬遠され、投資が見送られることが多いです。

そして悲しいかな、ファーストタイム・チームの大半は、実際に数年で空中分解するか、ファンドが稼ぎ始めたころに取り分を巡って空中分解するパターンが、非常に多いのです。

3.業界受けする、PE業界で信頼されているアンカーインベスターの存在~LP投資家層がショボければ、ファンドの業界ランキングも低下する?

プライベートエクイティは、信頼ビジネスです。
質的な評価が多いために、長年のPE業界の御意見番、デューディリジェンスの厳しさと正確さで知られる業界のドン(住〇のMさん、A〇のYさんのような方々)がアンカーインベスター(大きな額を投資しファンドを支える、キーとなるLP投資家)を担ってくれたら、それ自体が資金調達の呼び水となります。

”あの著名LPがOKサインを出した、勝ち馬に乗れ”とばかりに、他人のデューディリジェンスにただ乗りして入ってくるLP投資家も少なくありません。

従ってプライベートエクイティ業界で独立して自分のファンドを創設するには、影響力の強いブランドLPにアンカーインベスターになってもらうことが、極めて重要です。

逆にアンカーインベスターがショボいと、”ファンドレイズに苦労し、いわゆる二流のLPにしか相手にされなかったのでは”と勘繰られます。

言い換えれば、”あんなしょぼいLPしか集められなかったということは、一流LP投資家の御眼鏡に適わなかったのだろう”という、不名誉な烙印を押されかねないのです。

4.日本に投資するLPの投資テーマに合致する投資戦略~LP投資家の”宗派替え”はほぼ不可能

あらゆる営業活動と同じで、プライベートエクイティファームがファンドレイズするには、LP投資家がどのようなハウスビュー(機関投資家として、ファームとしてのマクロに対する考え方とそれに沿った投資戦略)を持っているかを理解し、それに合致するようなストーリーを準備する必要があります。

たとえば、「日本は金融緩和と財政拡大をやりまくったわりに構造改革が全く進まなかった安倍政権が終わった。次の政権は財政拡大と金融緩和の両翼が縛られた状態でそのツケを払うことになるから、緊縮で経済停滞するだろう。よって日本はバイアウトかディストレスドの機会が増える」などというハウスビューを持っているLP投資家には、それに沿ったストーリー、すなわち”ディストレスド投資で豊富な実績とパイプラインがあり、、、”といった話をぶつけることになります。

逆に、”米中対立が深まると、中国企業との取引が出来なくなった企業が日本企業を選ぶようになるので、日系企業の海外進出をサポートできるファンドに投資したい。かのウォーレンバフェットが5大商社を買ったのと同じロジックだ”などというハウスビューを持っているLP投資家に対しては、”弊社は日本の有力企業の海外進出でEBITDAとバリュエーションを高めていきます”みたいなストーリーがハマることになります。

ともあれ、ハウスビューが違う投資家に、宗派替えを促すようなマーケティングは、苦労する割に失敗します。

つまるところターゲットにしているLP投資家のハウスビューを理解し、それに沿ったソリューション提供をできるのは我々だ、というストーリーを用意できるかどうかが、肝になるのです。

5.魅力的なパイプライン~PEファンドを設立できたら、すぐに優良な投資に資金が使われる、感を出すこと

プライベートエクイティファンドで独立するには、最初にトラックレコードが最も重要だと記述しました。しかしそれが無い場合も、可能性がゼロになるわけではありません。

そもそも今ではトラックレコードが100件以上の投資を誇るアドバンテッジパートナーズにしても、最初はトラックレコードゼロの状態で、やっとこさ25億円集めるところからスタートしたのです。

トラックレコードがないがファンドレイズに成功する人の条件は、魅力的なパイプライン、つまり”資金が集まればすぐに投資できる魅力的な案件候補”につきます。

大抵は”ディールバイディール”といい、各ディールに対するLP出資という形で実績を重ね、信頼を構築するのが先決です。

そしてディールバイディール案件でLP投資家に儲けてもらって信頼を獲得した後に、ブラインドファンド(何に投資するかわからないけど、10年間あなたを信じてこのお金預けます、という、一般的にPEファンドと聞いて皆さんがイメージするほうのファンド)設立に動くのが一般的な順番です。

特に、まだどのような案件に投資するのか不明なブラインドファンドでは、パイプラインの質と量が、”なぜその金額のファンドを設立するのか”を説明するためにも、重要になります。

くれぐれも、魅力的なパイプラインをしっかり仕込んだ上で、独立のための最初で最大の関門、ファンドレイズに臨みましょう。

PSなお、現在主要PEファームで働かれていて、強いトラックレコードと業界での評価を有しておられ、アンカーインベスター候補選定やPEファンド設立のコンサルティングを御希望の方は、こちらまでご連絡ください。

(PSレギュレーションの兼ね合いから、当サービスは資金調達支援ではなく、あくまでビジネスコンサルティングとなります旨、ご了承ください。)