
プライベートエクイティファンドでの報酬は、4つに分かれているとご存じでしょうか。最初はベースサラリーとボーナス少々ですが、ディレクタークラスになると(ファームによってはアソシエイトも対象に)、(上手く行けば)金銭的破壊力満点のキャリーが得られます。これに加え、パートナー(共同経営者)になれば、GPカンパニーからの配当も得られます。大切なのは、PE業界ではベースサラリーやボーナスで稼ぐのではなく、キャリーで稼げるPEファームに入ることです。
プライベートエクイティは高給で知られますが、その報酬体系はあまりよく知られていません。そこで今回は、プライベートエクイティファンドの年収・給料の仕組みについて解説したいと思います。
ベースサラリー
ベースサラリー、つまり毎月の月給ですが、これは実はそう高くありません。20代アソシエイトだと1000-3000万円、30代、40代でディレクター、パートナーになっても5000万―1億円といった水準です。これは、そもそも所得税だと税金が高いので、所得税対象になる部分は低く抑えることが多いのです。
ボーナス
プライベートエクイティのビジネスモデルからして、毎年の収入はかなり見えているので、投資先の起業が高値で売れた、とかが無い限り、大きな変動はありません。総じて年収の15-40%がボーナスとして支給されます。ただ、ファンドレイズ(資金調達)に著しい貢献があったり、投資案件発掘や売却に大きな貢献が認められたときは、上乗せされることもあります。(ファームによって方針は異なります。)
キャリー
これが、プライベートエクイティで働いていないとあまりピンとこないのですが、一番ありがたい部分だったりします。プライベートエクイティ業界ではそのファンドの投資家に、元本およびハードルレート(8%のIRRが一般的)を先に還元します。それを超えた部分に関し、20%がキャリーと呼ばれ、プライベートエクイティファンドのGP(General Partner=投資運用会社)に配分されます。
キャリーは、案件ごとに配られる時もありますが、一般的にはファンド全体に対するキャリー計算が一般的です。さて、かりに100億円の案件を300億円で売却したとします。その間が5年だったとすると、100億*1.08の5乗を掛けて、大体147億円が先に投資家に還元され、300億からこれを轢いた153億円の中、20%の約30億円がキャリーとしてファンドマネジャーに支払われます。実際はもう少し複雑な計算がありますが、概念を簡単に説明すべく、あるていど簡素化しています。
さて、この30億円が、プライベートエクイティファンドのチームに配られるわけですが、せいぜい20人とかで分配されるので、一人当たりの取り分はかなり高額にもなりえます。だいたいパートナーがほとんど持っていくのですが、アソシエイトやディレクターの若手で仮に2%持っているとすると、6千万円入ってくることになります。
仮にパートナーで20%くらいキャリーの取り分を持っていると、実に6億円入ってくることになります。これがキャリーが給料やボーナスよりもよっぽどインパクトが大きい所以です。
配当
もしあなたが、プライベートエクイティファンドを運営する会社(マネジメントカンパニー)のパートナーとして、株式を仮に10%持っているとしましょう。すると、毎年、サラリーとボーナスと(よい売却があったときの)キャリーに加え、マネジメントカンパニーの配当も手にすることができます。これは、ファンド規模が大きく、2%などの毎年入ってくるマネジメントフィーの総額が、人件費や運営費よりよっぽど大きく毎年大きな利益が出ている場合、この配当の方がよっぽどサラリーやボーナスより大きくなることもあります。
サラリーやキャリー、配当にかかる税金は、ファンドのストラクチュアリングの仕方で大きく変わってくるのですが、プライベートエクイティファンドの給料やボーナス、年収の実態を簡単に説明すると、以上のとおりです。
キャリーで稼ぐファンドが、LPに評価される
なお、LP投資家(ファンドへの投資家)への受けがいいのは、”私はマネジメントフィーからくるサラリーではなく、キャリーで稼ぐ投資家です”というメッセージです。これは、マネジメントフィーは投資の成果に関わらず毎年一定の額が支払われるのに対し、キャリーはLP投資家としても、投資案件の売却益から支払うので、LP投資家とGPで利益が一致しているからです。