
カーライルが、ニューズピックスを展開するユーザーベースに友好的TOBを発表しました。そこに現れるプライベートエクイティファンドの本質を解説します。
カーライルがユーザベースに、プレミアム100%以上つけて友好的TOBを行っている。ここで興味深いのは、発表される一週間以上前から低迷していた株価が急伸していることだ。TOBアルアルなのだが、必ず誰かが情報を漏らし、TOB前に株価が上がるケースは少なくないのだが、なぜこれがインサイダーで問題にならないのか、いつもながら不思議である。
さて、上場後僅かの期間で再度非上場化するとなると、そもそも何のための上場だったのか、単に創業者が売り抜ける為の上場だったんじゃないかとツッコまれそうだが、公開株市場よりプライベート市場の方が高いバリュエーションで取引されることも少なくないというケースが増えているため、今後も上場企業の非上場化案件はプライベートエクイティ案件として、増えていくことだろう。
次に注目すべきは、ユーザベースの社外取締役にカーライルの関係者が入っていたことだ。これを書いている私も社外取締役的な立場で企業の役会に出ていたりするが、そうすることで会社の中身の問題点や改善点、可能性などもよく分かるため、私も社外取締役をしながら、そのオーナーにファンドへの売却を持ちかけたりもしている。カーライルのユーザベース友好的TOBは、プライベートエクイティ案件のディールソーシングとしても、社外取締役に座らせてもらうことは有効であることを示す一例とも言えよう。
最後に、この案件はプライベートエクイティ好みのビジネスであるという点も注目したい。ニューズピックスは有料課金で有料会員数は伸び悩んでいるとはいえ、安定的なフリーキャッシュフロービジネスである。またユーザーベースの方も安定的なフリーキャッシュフローが発生するビジネスなので、LBO案件化しやすい。
なおニューズピックスも長らく踊り場で伸び悩んでいたうえ、主力幹部の離脱も散見され一時の勢いはなくなってしまっていることからも、既存経営陣の下での伸びしろより、新たな株主と経営者の下での伸びしろの方が大きい事であろう。
ただ「まだ会社が駆け出しの時から一緒にいてくれたから」といった古株や、中途採用したもののあまりパフォームせず、かといって降格や解雇は出来ないし、、という理由でいた一部社員さんは、しがらみのない新たな株主と役会により、かなりそのキャリアは厳しい展開を向かえることであろう。