
20代、30代前半までは”アソシエイト”として転職することが多いものですが、この”アソシエイト”として過ごせる会社は通常2社まで、多くても3社までです。いいかれば、2,3社働いたのちは他社でディレクタークラスで通用する成熟さと専門性が求められます。右も左もわからない未経験者が、見様見真似で仕事を覚える期間として許してもらえる年数は、そう長くありません。自分の長いキャリアの中で、どこで「アソシエイト」としての期間を過ごすのか、正しい判断を下せるようにしましょう。
アソシエイトとして過ごす場所を、間違ってはならない
就職先・転職先としてエリート層に人気の戦略コンサル、プライベートエクイティ、そして(一時の人気は一服したとはいえ)外資系金融機関ですが、アソシエイトとして転職する年代の時は、「どうせ若いから、とりあえず入ってみよう」という気軽な考えで足を踏み入れてしまいがちです。
しかし一度入ってしまったが最後、そのままずるずる長居した結果「何が何でもその業界で出世したい」というモチベーション全開の「天職組」の後塵を拝する人は多いものです。
さらには昇進すべきタイミングで解雇されてしまい、次の行き場に困る人も少なくありません。
以下では「アソシエイトとしての生き方」を考える上で重要なポイントを解説します。
若い20代に過ごす会社のDNAが、自分の「ビジネスパーソンとしての土台」を形成する
まず第一に、20代、30代で過ごした業界・会社での仕事のカルチャーは、自分のビジネスパーソンとしての動き方、考え方のOS(Operating System)になることが多いです。
たとえばリクルート出身者は、飛び込み営業ができる足腰が鍛えられる代わりに、その期の営業成績必達に考え方が引きずられます。
投資銀行部門出身者は、細かい資料作成やブラインドタッチのピアノ演奏なみのエクセルワーク、そして財務分析やモデリングの基礎を学べますが、いつもまにやらそれ以外できない人になり、業界から一歩外に出ると「使えないオジサン」であることも少なくありません。
コンサル上りは資料作成やミーティングメモは完璧で、ジュニアポジションであればどの業界にいっても重宝する基礎的能力が身に付きます。しかし同じ人がコンサルに長居した後にスタートアップに行くと、いつまでも資料作りと検討ばかりしていて、(しかもコンサル業界特有の”~~思量します”などの用語ばかり使っていて、周囲をイライラさせる)リスクを取って決断・行動するスピードについていけない人も存在します。
アセットマネジメント業界でバイサイドアナリストなどやっていた人は、財務やバリュエーション、投資の知識は身に付きます。しかしながら評論家的に他人の会社を分析できても、いざ自分が実行する側に回ると、「お客さんである投資家」生活に慣れてしまい、手足が動かず単なる役立たずな人も、少なくないのです。
ここで重要なのは、自分がアソシエイトとして若い時代を過ごす業界や会社のカルチャーは、自分のプロフェッショナルライフを通じて自分自身に深遠な影響を与え続けるということなのです。
30前半のアソシエイト転職で失敗すると、後がない~転職先のランクが急落
20代前半や中盤ですと、まだ転職先でも未経験採用・アソシエイトとして、いくらでも転職する機会があります。しかしこれが30前半になると、後がありません。
つまり30前半の転職先で目が出ないまま数年過ごして30代中盤ないし後半になると、再度転職できる場所が、即戦力として活躍できる分野に限られてしまうのです。これが、20代後半と30代前半の「転職決断」の重さの違いです。
当サイトには30代前半で未経験業界のコンサル・PEなどへの転職を志望する方が沢山いらっしゃいますので、声を大にして、いや、文字を太字にして申し上げたいと思います。
決して軽い気持ちで「あまり活躍できない業界」に転職してしまってはいけません。30代半ばでキャリア転落の道を転げ落ちる事態にならないよう、御自身の向き・不向きを深く見極めたうえで、30代の転職に臨まなければなりません。
向いてない業界・職場で、貴重な「アソシエイト期間」を浪費してしまうと、周囲より多少高い給料を、周囲より数倍忙しい環境で働きながら受け取りつつ、実は「人生後半に於ける負け組まっしぐら」ということにもなりかねません。
人生の借り入れ時の30代後半で、自分に向いている仕事を選び、大学卒業後15年経験を重ねた「天職組」に比べて、途方もない市場価値の差がついてしまっているものなのです。