プライベートエクイティでゴールドマンよりマッキンゼー出身者が成功する理由とは?

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一時はプライベートエクイティファンドというとゴールドマンサックス出身者が多いイメージでしたが、日本のプライベートエクイティ業界発足から25年近くたった今、マッキンゼーなどMBB出身者の方が数多く活躍しているようです。またベンチャーキャピタリストも、コンサル出身者が数多く活躍しています。PE黎明期のBSリストラリターンから、現在はPL改善、しかもコストカットではなくトップラインを伸ばせるかどうかの勝負になっていることも一因でしょう。

プライベートエクイティ業界ではバリュエーションやファイナンシャルスキルより、経営バリューアップの方が重要

1990年代後半から2000年代前半にかけてのPE業界勃興期は、日本がバランスシート不況でしたので、ファイナンシャルリストラクチュアリングで投資リターンを得ることが多かったものです。よってゴールドマンサックス出身者が活躍していました。

しかし今ではPLのトップラインを伸ばすことが投資リターンの最大の源泉になっていることがほとんどであり、コンサル的なスキルや行動パターン、思考パターンが求められるようになっているのです。

また投資検討は数か月ですが、投資した後は3年から5年、下手したら10年近くのお付き合いになることもあります。その長い保有期間中、重要なのは経営陣を動かすガバナンス能力と、オペレーションバリューアップできるスキルなのです。

プライベートエクイティは一人で完結する仕事より、チームを率いる仕事が多い

プライベートエクイティは案件チームのみならず、投資先の経営陣やミドルマネジャー、従業員に気持ちよく働き、やる気になってもらう仕事です。エクセルとにらめっこしてバリュエーションを計算したりするより、ガバナンスを強化して、適材適所の採用を行い、人事制度を「働いた人が報われる」仕組みに変えることが重要になるため、人間力が非常に試されます。

業界外部から思われるイメージとは裏腹に、金を動かすより人を動かす仕事という側面の方が強いため、投資銀行よりコンサルで学んだ経験の方が活かせることが多いのです。

(マッキンゼーでも人を説得するには論理や感情、道徳と異なる要素に訴える必要があると習いますが、日本のようなハイコンテクストカルチャーでのミッドキャップ投資では、特に人の感情面に訴えるコミニュケーションも極めて重要となるのです。)

プライベートエクイティは色んなステークホルダーを説得する仕事

またプライベートエクイティの実務では、LP投資家や投資先の経営陣、投資委員会、レンダーなど様々なステークホルダーコミニュケーションが不可欠です。

このような多くのステークホルダーの期待値を管理し、良好な関係を築き、リレーションシップをマネジメントすることが重要であるという意味でも、コンサルで現場に入ってクライアント企業の人々をひざを突き合わせ汗をかき、実際にチームを動かしてきた経験が、投資先のバリューアップ実務の中で、モノを言うのです。

なお金余りの今、どこのファンドも投資家や企業へのピッチポイントはお金ではなく、どれだけ企業価値向上に貢献できるかの競争に変化している点も、コンサル出身者が重宝される背景にあると言えるでしょう。バイアウトファンドにしてもベンチャーキャピタルにしても、「その資金を受け入れた企業にどれだけバリューアップを実現できるか」を競う市場になっているのです。