
投資の神様・ウォーレンバフェット氏率いるバークシャーハサウェイが、日本の5大総合商社株を大量購入し、話題になりました。このことを喜び勇んでFBに投稿する三菱商事の社員が大量に出現していますが、バフェット氏が買ったからと言って、総合商社でのキャリアが魅力的になったことを意味するのでしょうか?答えはビッグNoです。以下ではバフェット氏が総合商社株を買った本当の理由と、それが総合商社からの転職時期を遅らす判断に全く繋がらないことを解説致します。
商社からの転職で勝者になる人々~ウォーレンバフェットが株を買ってもダメ!?
かのウォーレンバフェット氏率いるバークシャーハサウェイが日本の総合商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)株を大量に購入(5%程度)し、三菱商事などで勤める友人が誇らしげにFBにこのニュースをアップしています。
では、投資の神様が株を買ったということは、総合商社でのキャリアが明るくなったことを意味するのでしょうか?
以下では、その答えが絶対Noであることを、バフェット氏が総合商社を買った理由と共に解説致します。
1.バフェットが総合商社を買ったのは、米中対立で日本が漁夫の利を得ると考えたから
バフェット氏が総合商社株を買ったのは、今更総合商社の”すばらしさ”に目覚めたからではありません。
米中対立で世界中の企業が中国企業との取引をカットしていく中、海外の資源やインフラプロジェクトで中国企業に仕事を奪われてきた日本企業、つまり総合商社に商機が増えると判断したからです。
総合商社は世界にその情報網を張り巡らされており、これまでは親方日の丸をバックアップに世界の資源株を買い上げてきたわけですが(有名なのが三井物産のBHPビリトンやリオティント)、今後は親方の親方、アメリカ合衆国がバックについて、世界の資源獲得競争における総合商社の優位性が高まることに目を付けた投資でした。
しかしこのことは、総合商社での官僚的なシステムな大量の社内調整、40まで主要な決裁権が持てないといった、総合商社勤務の若手社員にとってのデメリットを解消するものでは一切ありません。
2.バフェットが商社投資の時点で、見逃したか大目にみたこととは?
投資の神様として名高いバフェット氏ですが、航空企業への大型投資で失敗を認めるなど、中には失敗する銘柄もあります。
そしてストロングキャリアは総合商社への投資は裏目に出るというハウスビューを持っています(世界のバークシャーハサウェイに、港区のストロングキャリアが挑むのかよという、壮大な社内ツッコミをいれつつも)。
総合商社は1970年、80年代のように日本最高峰のビジネス人材を集められる組織ではなくなっています。また社員の平均年齢も高くなり、官僚的な制度で動きが極めて遅くなっています。そして今やライバルは中国だけでなく、韓国のサムスンやLGなどアジア各国に広がっています。
また好況時の利益の大半は、資源価格の高騰によるものであり、別にビジネス創出能力が高いからというわけではありません。
バフェット氏の総合商社購入が、資源株の割安デリバティブという判断ではなく総合商社の人材及び利益創出能力に在ったとしたら、総合商社を買いかぶりすぎといえるでしょう。
3.総合商社からの転職に成功する人のポイント
そんなツッコミどころ満載の組織実態であるにも関わらず、バフェット氏が株を買ったということでプチ浮足立っている、一部総合商社社員の皆さん。
しかし現実と将来をしっかりと見据えている人は、市場価値のつかないオールドヴィンテージに自分がなる前に、さっさと総合商社から転職していきます。
総合商社からの転職に成功する人は第一に、遅くとも40までに転職、出来れば30そこそこでMBAに留学するか、MBA留学を終えたタイミングで転職します。
もちろんMBA留学後、5年は会社に残るという約束だったじゃないかという”裏切り者”感を感じつつも、断固35までに転職するのです。
会社は何十年でも分厚いバランスシートと政府保護で持ちこたえられますが、自分のキャリアは自分しか守ってくれる人がいません。
MBA留学支援金を転職先に買い取ってもらう(実際そんなことは、可能なのです)、ないし自分で返金するなりしてでも、退職のタイミングを誤ってはいけません。
総合商社から、安易にコンサルや投資銀行に転職するのはNG!
総合商社からの転職に成功する人は第二に、安易にコンサルに転職しません。
これは、三菱商事のエース社員だったとはいえ、30でマッキンゼーに入って、22歳からマッキンゼー一筋のアソシエイトパートナーに昇進した同年代とコンサルとして戦うのは、キャッチアップに時間がかかり、分が悪いのです。
私の元上司は三菱商事のエース社員で社費でHBSに留学した人でしたが、30後半で某投資銀行にエグゼグティブディレクターとして入り、大型増資の案件を獲得して2年後にはマネジングディレクターに昇進していました。
しかも投資銀行のMD職に安住することなく、その2年後には某大手外資系企業の日本法人のCFOになり、その後社長に就任。
その後は大手多国籍企業の社長職を三社歴任する、文字通り多国籍企業経営のプロ人材として今も活躍されています。
(逆に、30を超えて総合商社からコンサルに転職し、その後10年以上コンサルを続けている人は、鳴かず飛ばず率が高い傾向にあります。)
重要なポイントは、総合商社から転職する時は、30を超えていまさらコンサルや投資銀行のプロフェッショナル人材として戦うのは分が悪いということです。
従って入社するポジションに気を付け、プロフェッショナルファームに転職する数年は、その後の企業経営ポジションに移るための”橋渡しキャリア”だという位置づけを、忘れないことです。
PS・他方、プライベートエクイティに転職を果たした元商社マンは、長らく検討している人が実は結構いらっしゃるのですが、その詳細はまた次回以降のコラムで解説致します。